新シーズン開幕直後のNBAに激震が走った。現地10月23日、FBIはヒートのテリー・ロジアーやトレイルブレイザーズの指揮官チャウンシー・ビラップスら30人以上を逮捕した。FBI長官は「これはNBAのインサイダー取引事件にあたる」とコメントしている。 ロジアーは選手が試合を欠場したり途中でベンチに下がるといった情報をギャンブル関係者に流した容疑で逮捕された。ホーネッツ時代の2023年3月のペリカンズ戦で、彼の個人スタッツに対するオンラインベッティングで『通常では考えられない賭け金の動き』があったのが容疑発覚のきっかけ。その試合でのロジアーは5得点4リバウンド2アシストを記録し、9分半プレーしただけでベンチに下がった。ギャンブル関係者のグループはロジアーから事前にこの情報を得て、大金をロジアーの『アンダー』（一定のスタッツを下回るほう）に賭けたとされる。 NBAは調査の結果、彼に違法行為はなかったと判断し、FBIは捜査を続けているがロジアーはその対象から外れたとされていた。しかし実際には、シーズン開幕のマジック戦のために滞在していたオーランドのホテルで彼は逮捕された。 ロジアーの弁護士は強い言葉で捜査当局を非難した。「見せしめのような逮捕は残念だ。プロアスリートを犯人にすることで注目を集め、自分たちの手柄にするのが逮捕の動機だ。捜査当局とは以前から連絡を取り合っているが、彼らはアテにならない情報源の言葉を信じている。NBAはテリーへの嫌疑を晴らしたのに、彼らは無意味な容疑を掘り起こした。ロジアーは戦いを恐れない。この戦いに勝つのを楽しみにしている」 ビラップスは違法なポーカーへの関与という容疑で逮捕された。NBAでは合法なカジノやNBA以外のスポーツへの賭けが禁止されていない。しかし、今回ビラップスが関与したのはイタリア系マフィアがからむ闇ポーカーだ。被害者は元NBAスターのビラップスにポーカーに誘われるが、様々な技術を用いた不正な手口により大金を巻き上げられた。ビラップスはこの行為に2019年から関与していたとされる。 また、起訴はされていないが、ブレイザーズの主力選手が欠場する情報をギャンブル関係者に流した匿名の容疑者のプロフィールがビラップスと一致する。ヘッドコーチがギャンブル関係者に内部情報を提供したとなれば極めて大きなスキャンダルとなる。 これを受けてNBAはロジアーとビラップスに活動停止を命じた。ブレイザーズは指揮官を失うことになる。開幕戦ではティンバーウルブズに敗れたが、若いチームが優勝候補に最後まで食らい付く好ゲームだった。こんな形でビラップスが去れば、チームへのマイナスの影響は計りしれない。 一方で、彼らはまだ逮捕されただけで有罪となったわけではない。全米バスケットボール選手協会は「試合の公平性は最重要事項だが、推定無罪の原則も同じぐらい重要だ。選手の知名度を利用して注目を集めることは、この両方を毀損する」との声明を発表している。