【全身に13カ所】芸能界追放、懲役経て政治家になった“ゴマキの弟”後藤祐樹市議が語る「タトゥーを後悔していません」

「初めてタトゥーを入れたのは、16歳のときですね。先輩が入れていて、タトゥーってカッコいいな、という何の信念もない、浅はかな理由でした」 現在、千葉県八街市議として活動する後藤祐樹は、こう振り返った。彼は2000年に『EE JUMP』のメンバーとしてデビュー。後藤真希の実弟ということでも注目され、一気にブレイクした。だが2002年、キャバクラでの未成年飲酒が報じられ、芸能界を追放された。 「あのときは単純に浮かれちゃって、いわゆる世間でいう天狗みたいな感じになっちゃってました。芸能界をやめて普通の学生になって…その後は、本当に後悔するようなことばかりしていました」 定時制高校に進学するも、半年で中退。最初のタトゥーを左肩に入れたのはこのころだ。 2007年ごろからは、建設工事現場に不法侵入し、銅線を盗んで転売する銅線窃盗に手を染めるように。そして、2007年10月に逮捕され、懲役5年6カ月の実刑判決を受けた。 「悪いことをして刑務所に行ったことを美化するつもりはないんですが、5年半という懲役を宣告されて、長い間、刑務所に収監されたことが自分の人生の分岐点になったと思っています。まじめに働けばよかったと後悔したし、二度と家族に同じ思いをさせたくない、必死にがんばろうって」 出所後、後に再婚する妻の親族の建設会社で働き始めた後藤は、2018年に東京から八街市に移住。「右も左もわからない自分を助けてくれた、近所の人たちに恩返しをしたい」と2023年、市議選に立候補し、2位タイの得票数で当選を果たした。市議に立候補する前に、首にあった鯉のタトゥーを完全に除去した。 「市議になるからではなく、逮捕されたときに母親から言われた『首だけは消してほしい』という約束を守っただけなんです。レーザーでの除去施術は2年ほどかかりました。当時は市議になろうなんて考えてもいなかったので、母との約束を守ったことでいい方向へ進んだとは思っています」 細かいタトゥーも入れると、胸、背中、両腕など13カ所にタトゥーが入っている。胸の龍、背中の夜叉は未完成で、時間をかけて完成させるつもりだという。 「刑務所のなかで知り合った彫師の方がノートに書いていた龍の絵がすごく好きで。『出たら、彫ってください』ということで、長野の伊那市まで通っています。なので、なかなか進まないんです(笑)」 芸能人のタトゥーが発覚すると即ネットで炎上し、たたかれる時代だ。議員活動をするうえで悪影響はないのか。 「僕はワイシャツを着ていても、タトゥーが手首まで入っているので見えちゃうのですが、それを言ってくる人も、注意されたこともないです。法律違反をしているわけではないので、本来は非難されるものではないと思います。僕はタトゥーが入っていても、政治家になれたわけですから」 とはいえ「少しずつ理解はされてきたが、日本はタトゥーカルチャーにまだまだ寛容ではない」という現実がある。 「“誰がタトゥーを入れているか”ということが重要視されているような気がするんです。僕は罪を犯してしまったので、そもそも論外だとは思いますが、俳優さんが入れているのか、ゴリゴリのロックバンドの方たちが入れているのか。たたかれる人とたたかれない人がいるのは、視聴者から見た“この人はこうあってほしい”という偶像を裏切られた絶望感が大きいからではないかと思います」 タトゥー=悪い、という先入観もあるのでは、と話す。 「タトゥーを入れている人が罪を犯すと『だから、入れ墨を入れているやつはダメなんだ』という言われ方をするんですけど、僕が刑務所にいたとき、タトゥーを入れていない人の割合が8割、9割で、入れている人のほうが実際は少ないんですよ。それでもタトゥーを入れてる人が罪を犯すと、余計に悪く見られるっていう……そこは理解はしています。僕自身もタトゥーを入れたことで、世間からどう見られてしまうのか、ということを少なからず気にしながら生きていかなくてはならないと思っています」 タトゥーはある意味、愛情表現のようなものだという。 「若いころとは違い、いまは自分にとって大切なもの、忘れたくないものを彫っています。脇腹には奥さんの名前が入っていますし、お腹にはウチのワンちゃん5匹が入っています。背中ではなくお腹に入れたのは、今後にワンちゃんが亡くなったときに、自分が見られるところに入れたかったからです。自分にとって忘れたくないものを、体に刻むのがタトゥー。だから今後も消すつもりはないですし、タトゥーを入れたことを後悔していません」 そんな彼が、市議になっていちばんやりたかったことは、八街市を「安全・安心な町」にすることだ。 「八街は公園が少なく、ガードレールも少ないんです。4年前には飲酒運転のトラックが、下校途中の小学生の列に突っ込む痛ましい事故もありました。ガードレールがないうえに、道路脇に草が飛び出しているので、子どもたちは草を避けて車道にはみ出してしまうんです。少しでも危険な道路を減らしたいと思い、SNSで市民の方からの要望を集め、ボランティアを募り、草刈りをしています。市民の方からの『ありがとう』が直接、聞けるので、やりがいを感じています」 10年ほど前からおこなっていた保護犬活動を生かし、現在は実費で保護猫活動もおこなっている。保護した6匹の猫は、彼を癒やす存在だ。 「何でもいちばん難しいのは、ゼロイチを作ること。つねに何かに挑戦したいと思っています。ただ、あくまでも市民の負託を得られているのが大前提。成果を上げられていない、という声が多ければ、自ずとやめる覚悟はできています」 異色のタトゥー市議は、“後悔しない”ために、前を向いて進む。 プロフィール 2023年8月の八街市議選で初当選。2025年4月には八街市内に就労継続支援B型事業所を開設。一般企業などでの就労が困難な障害者の自立支援などをおこなっている

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加