イギリス中部で1日夜、走行中の列車内で複数の人が刺された。鉄道警察は、10人が病院に搬送され、このうち9人が重体だと発表した。 警察によると、ドンカスター発キングス・クロス行き午後6時25分の列車内で刃物による事件が発生したと、午後7時42分に通報があった。列車はケンブリッジシャー州のハンティンドン駅で緊急停止した。 警察によると、事件に関連して2人を逮捕した。 鉄道警察は事件を「重大事件」と位置づけ、捜査している。テロ対策警察も捜査に加わっているという。 警察によると現地では列車の運行が停止しているほか、複数の道路の閉鎖も続いている。 鉄道警察のクリス・ケイシー警視長は「衝撃的な事件」だとしながら、原因については推測できないと述べた。 「我々は引き続き駅で対応中で、しばらく続くことになる」と警視長は述べた。 「これ以上の情報を確認できるようになるまでには、しばらく時間がかかるかもしれない」ともケイシー氏は言い、一般市民の「忍耐と協力」に感謝した。 地元メディアによると、列車に乗っていた乗客の一部は、午後11時ごろ、ロンドン行きのバスに乗せられた。 ピーターバラ・テレグラフ紙は、ハンティンドン駅に大勢の緊急対応部隊が展開する中、乗客はバスで駅から運ばれたと伝えている。 現場で撮影された映像には、保温用の銀色の毛布を巻いた人たちがバスに乗り込む様子が映っている。 ■「手当たり次第に刺している」 事件の起きた列車に乗っていたレン・チェンバース氏は、腕から血を流した男性が車両の通路を走りながら「連中はナイフを持ってる、逃げろ」と言うのを見て、異変に気付いたという。 チェンバース氏は友人と一緒に列車の前方へ走り、床に倒れている男性を目撃した。事態を理解した時、「あせって、とても怖かった」とチェンバース氏は話した。 二人は無傷で列車から降りることができた。 同様に事件当時、列車に乗っていたオリー・フォスター氏はBBCに対し、出血した被害者たちが助けを求める中、乗客たちは「完全なパニック状態」に陥ったと話した。 フォスター氏はまず最初に、「逃げろ、逃げろ、男が手当たり次第にみんな刺してる」と叫ぶ声を聞いた時、ハロウィーンの翌日の悪ふざけかと思ったと述べた。 それから間もなく、大勢が押し合いながら車両内を移動し始めたという。 フォスター氏はそこで、自分の手が「血で覆われている」ことに気づいた。寄りかかっていた椅子にも「血がべっとりと付いていた」からだという。 フォスター氏によると、年配の男性が若い少女への刺傷を「阻止」しようとして、頭部と首に裂傷を負った。周囲の乗客たちはそれぞれの上着を使い、男性の出血を止めようとしていたという。 自分がいた車両で襲撃犯に対抗するため乗客が使えるものは、ジャック・ダニエルのウイスキーのボトルだけだったため、犯人が車両に入ってこないように全員が「祈って」いたのだとフォスター氏は話した。 犯行が続いていたのは10〜15分ほどだったが、「永遠のように感じた」とフォスター氏述べた。 BBCのジョン・アイアンモンガー記者は、事件の起きた列車が午後8時ごろにハンティンドン駅に近づいた時、プラットフォームに立っていたという男性から話を聞いた。 ロンドン地下鉄職員のディーン・マクファーレン氏は記者に対して、列車が到着した際、乗客の一人が出血しているのを見たと話した。 マクファーレン氏によると、列車が到着すると、複数の人々が出血しながらホームを走り出した。白いシャツを着た男性は「全身が血まみれだった」という。 マクファーレン氏は周りの人たちに、駅から離れるよう促し、パニック発作を起こしていた乗客たちを助けようとしたのだと話した。 ■イギリスで増えるナイフ事件 イギリス政府統計によると、イギリスではナイフを使った犯罪が2011年以降、「着実」に増加している。 問題の深刻化を受けて、キア・スターマー首相はこれを「国家的危機」と呼んでいる。 政府による幅広い取り締まりによって、過去1年間で6万本のナイフが警察に引き渡されるか押収された。公共の場でナイフを所持することは、最長4年の禁錮刑の対象となる。 10月2日にイングランド北部マンチェスターのシナゴーグで起きた刃物による事件では、2人が死亡した。今回の列車内の事件と共に、どちらも世界的な注目を集めている。 (英語記事 Nine people with life-threatening injuries after mass stabbing on train in Cambridgeshire)