韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は3日夜、国民に向けて緊急のテレビ演説を行い、「非常戒厳を宣布する」と述べた。北朝鮮の共産勢力の脅威から韓国を守り、自由な憲法秩序を守るためだとしている。どのような具体的措置をとるのかは、明らかにしなかった。 聯合ニュースによると、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は、戒厳令は違憲だと反発。同党の議員全員に、国会に集まるよう呼び掛けた。 聯合ニュースはさらに、与党「国民の力」の韓東勲(ハン・ドンフン)代表が「ユン大統領の非常戒厳の措置は間違っている。国民とともに阻止する」と述べたと伝えた。 韓国メディアは、大統領の「非常戒厳」宣言を受けて、韓国軍が国会活動の禁止を発表したと伝えている。 聯合ニュースによると、国会議事堂の入り口が封鎖され、議員が入れない状況だという。 ソーシャルメディアには、議事堂の外に警察が集まる様子とされる映像が投稿され始めている。 韓国の法律によると、国会の過半数が採決して要求した場合、政府は戒厳令を解除する必要がある。さらに、戒厳下でも国会議員の逮捕は認められていない。 ただし、聯合ニュースによると、非常戒厳の違反した者は逮捕令状がなくても逮捕されることがある。すべてのメディアも戒厳令下に置かれる。 韓国に非常戒厳令が宣言されるのは、1979年の朴正熙大統領暗殺事件後に全斗煥(チョンドファン)氏が実権を掌握し、翌年に非常戒厳令を全国に広げて以来。 今年4月の総選挙で与党が大敗して以来、尹大統領は政策実行に必要な法案を議会通過させることができず、逆に野党が可決する法案に次々と拒否権を行使せざるを得ない状態に陥っていたと、BBCのジェイク・クウォン記者は指摘する。 さらに大統領をめぐっては、妻・金建希(キムゴニ)氏に関するスキャンダルが相次ぎ、政権支持率が下がり続けていた。野党は、金氏に対する特別検察官による捜査を立ち上げようとしていた。 最近では、政府と与党が提出した来年度予算案を、野党が大幅に減額して単独可決した。大統領は予算案に拒否権を行使できない。さらに野党は、金氏を立件しなかった政府の監査トップなど閣僚に対する弾劾訴追を次々と発議している。 クウォン記者は、尹大統領はこうした状況を受けて、「反国家」勢力が国をまひさせようとしていると主張し、秩序回復のためだとして非常戒厳を宣布したのだと説明した。 (英語記事 South Korea's president declares emergency martial law)