身内「裏切り」トクリュウに情報漏えいか 容疑の警視庁警部補を逮捕

全国の警察が「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」の摘発に血道を上げる中、捜査情報は警察官の手によって相手に流されていたという。捜査対象者の不自然な動きから、捜査員の中には「情報が漏れているのでは」という懸念が以前からあった。 国内最大規模の違法スカウトグループ「ナチュラル」に捜査情報を漏らしたとして、警視庁は12日、暴力団対策課の警部補、神保大輔容疑者(43)=東京都板橋区前野町1=を地方公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕した。2023年から25年4月までナチュラルの捜査を担当していたといい、警視庁は捜査の過程でナチュラル関係者に接触し、逆に取り込まれたとみて調べている。 逮捕容疑は4月下旬と5月上旬、捜査の一環としてナチュラルの関係先を映した監視カメラの画像数枚を、スマートフォンのアプリを使ってナチュラル関係者に送ったとしている。警視庁は認否を明らかにしていない。 人事1課によると、ナチュラル捜査の過程で、8月ごろに神保容疑者に情報漏えいへの関与が浮上。自宅などを家宅捜索して調べたところ、神保容疑者が使っていたスマホにナチュラルが独自開発したアプリが入っていた。アプリは組織内の連絡や情報共有に使われており、神保容疑者は、このアプリで捜査情報を送っていたという。 送ったのは、暴力団対策課が捜査のために設置したカメラ映像を接写した画像。神保容疑者は4月にナチュラル捜査担当を外れてから、映像を自由に見られる立場にはなかったという。 捜査関係者によると、動向を追っていたナチュラル関係者の動きから、かねて捜査情報の漏えいが疑われていた。神保容疑者の自宅からは現金数百万円が見つかっており、警視庁は情報提供の見返りとして金品を受け取っていなかったかも調べる。 ナチュラルは、女性を性風俗店にあっせんするスカウトグループとして、09年ごろから東京・歌舞伎町を中心に活動を始めたとされる。会社を模した組織をつくり、22年には45億円の収益を上げていた。トクリュウの一つとして全国の警察が摘発に力を入れており、8月には警視庁がグループ幹部らの逮捕にこぎ着けていた。 神保容疑者は04年に入庁し、警察署や本部の旧組織犯罪対策4課で計14年、組織犯罪の捜査を担当。暴力団対策課には2020年12月から所属していた。菅潤一郎・警務部参事官は「言語道断の行為で、心からおわび申し上げる」とのコメントを出した。【春増翔太】

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