【カイロ=佐藤貴生】国連安全保障理事会で17日、米国が主導するパレスチナ自治区ガザの和平案を支持する決議が採択され、トランプ米大統領は新たな外交成果を手にした。ただ、ガザで交戦してきたイスラエルのネタニヤフ政権とイスラム原理主義組織ハマスからは決議に反発する声が既に出ている。和平実現に向けて多数の障害が残っていることがあらわになった。 米政権は10月上旬、中東諸国と協力してイスラエルとハマスを説得し、米和平案の「第1段階」への同意を取り付け、同月10日にはガザで停戦が発効。双方は身柄交換も行った。 安保理決議は、トランプ氏がトップを務める「平和評議会」にガザの暫定統治を委ね、治安維持に当たる「国際安定化部隊(ISF)」の創設も認めた。米和平案の「第2段階」移行に向け、核心となる構想に信任を与えた格好だ。 しかし、ハマスは決議に盛り込まれた武装解除を拒否。イスラエル有力紙ハーレツ(電子版)はハマスがISFと対立する事態もありうるとの見方を示した。ハマスは国際的な後見役にはガザの住民も反対するとし、平和評議会の関与も認めない立場を示した。 ISFへの参加候補とされる国々の足並みもそろわない。アゼルバイジャンは安保理の採決前、戦闘の完全終了が参加の条件だと主張した。イスラエルがISFへの参加に反対しているトルコは今月上旬、ジェノサイド(集団殺害)を行ったとしてネタニヤフ首相ら40人近いイスラエル高官らに逮捕状を出し、両国の関係はさらに冷え込んだ。 イスラエルでは、決議を巡り連立政権に加わる極右勢力がネタニヤフ氏を非難する一幕があった。草案段階で決議に、パレスチナ自治政府の改革とガザの再建が進展すれば、パレスチナ国家建設への道筋が「ようやく整うかもしれない」と記載されていることが判明したからだ。 極右のスモトリッチ財務相らは、ネタニヤフ氏が「沈黙した結果だ」などと主張。ネタニヤフ氏は「パレスチナ国家建設への反対姿勢に変化はない」と述べるなど釈明に追われた。ロイター通信によると、この文言は決議の付属文書として残った。