韓国戒厳令、「民主主義が簡単に脅かされることを痛感」 各地で集会

ソウル(CNN) 韓国各地で4日、キャンドルを灯した式典や集会が開催され、前日に尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が突如宣布した戒厳令に憤りや苛(いら)立ちを募らせた国民が尹氏の辞任を求めた。 首都ソウルの国会で野党が尹氏の弾劾(だんがい)訴追を試みる中、国会議事堂前の階段には数百人が集結。6時間の戒厳令は韓国に衝撃を与え、アジア4位の経済大国は政治的に不透明な状況に突き落とされた。 CNNの取材に応じた集会参加者は口々に、尹氏の動きを「正気ではない」「恥ずかしい」と形容した。韓国で戒厳令が宣布されたのは、1980年代後半の民主化以降で初めてだった。 ミレさん(64)にとって、短時間の戒厳令は一斉逮捕や人権侵害が横行した痛ましい独裁時代の暗い記憶を蘇らせるものだった。 ミレさんは眠ることができず、北朝鮮との国境付近にある地元の京畿道坡州市からソウルに赴いた。「警戒を怠らない」との思いからだったという。 韓国では1980年代、陸軍少将だった全斗煥(チョンドゥファン)元大統領がクーデターで実権を掌握し、戒厳令を布告した。国民は厳格な夜間外出令の下で暮らし、「屋外にいるところを捕まった人は全員、三清教育隊に連行された」とミレさんは振り返る。 「タバコを吸おうと外に出ただけでも逮捕される可能性があった」「身分証明書を携帯せず通りを歩いていた人は拘束された。至る所に私服警官が配置され、人々を捕まえようと目を光らせていた」 全大統領の統治の下、反対派の逮捕や大学の閉鎖、政治活動の禁止、メディアの抑圧が発生。1980年には学生の民主化デモの鎮圧に軍隊が投入され、200人近くが亡くなった。 教師のギョンスさん(55)はCNNの取材に、多くの学生が命を落とした光州の大学のそばに住んでいたことを明かした。 「私は恐怖に満ちた環境で育った」。ギョンスさんは4日夜にソウル市役所付近で開かれた別のキャンドル集会でそう語り、「戒厳令については深い個人的な感慨がある。昨日ですら、国会議事堂で銃撃が起きるのではないかと心配だった」と吐露した。 ギョンスさんは、戒厳令は「単なる遠い記憶ではない」と語る。「民主主義がいかに簡単に脅かされるかを痛感した」 このメッセージは民主化以降の韓国しか知らない人々の心にも響いているようだ。 ムン・セヨンさんはまだ15歳だが、4日、ソウルの集会に参加することを決意した。尹氏の戒厳令宣布は「誤り」で、「全くの思慮のなさ」を露呈したと語る。 ムンさんにとって、戒厳令は数ある不満の中のひとつに過ぎない。尹氏の任期ではこれまで全く進歩がなかったと感じているという。 「尹氏の任期中、対応が稚拙だったり、全く対処されなかった重要な出来事が多い。進歩がないどころか、後退しているように感じられる」 目下の焦点は今後の展開に移っており、尹氏は自身の党を含め、あらゆる政治的立場からの反発に直面している。 辞任圧力は強まる一方だ。ソウル中心部では4日夜、デモ隊が行進を始め、尹氏の逮捕を求める声を上げた。

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