2022年の大統領選敗北後にクーデターを企てた罪などで今年9月に有罪判決を受けたジャイル・ボルソナロ前大統領(70)が22日、自宅軟禁中に足首の監視装置を破壊したとして身柄を拘束された。23日に出廷した前大統領は、自分の行動は薬による「パラノイア」(偏執症)が理由だと主張した。 裁判資料によると、ボルソナロ前大統領は首都ブラジリアでの公判で、21日に足首の監視装置をはんだごてで開けようとしたことを認めた。薬の影響でしたことで、「我に返る」までそうしていたことを認めたものの、自宅軟禁から逃げるつもりはなかったと主張した。 当局によると、前大統領の自宅前は支持者集会が予定されていたため、逃亡の恐れがあるとして前大統領の身柄を拘束した。今後も首都の警察署での拘束が続くという。 ブラジルの最高裁判所は9月、大統領選の結果を覆そうとしてクーデターを企てた罪など罪状5件で前大統領に有罪判決を下し、禁錮27年3カ月の刑を言い渡した。判事らは、ボルソナロ被告が2022年の選挙で左派の対立候補だったルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ現大統領に敗れた後も、政権を掌握し続けようと共謀を主導したと判断した。判事5人のうち4人が有罪を支持し、1人が無罪を主張した。 前大統領はこの裁判を、自分が2026年の大統領選に出馬できないようにするためのものだと非難していたが、判決に先立ち別件で公職追放処分を受けていた。前大統領は、一連の裁判を「魔女狩り」とも呼んでいる。 アメリカのドナルド・トランプ大統領は、ボルソナロ前大統領に対する裁判を批判し、前大統領が起訴されたことへの報復としてブラジル製品に50%の関税を課した。 ボルソナロ前大統領の公判で検察は、被告が実際には大統領選よりずっと前から、留任する方法を画策していたと主張。被告が軍幹部にクーデターを提案し、選挙制度の信頼性について根拠のない疑念を広めていたとした。 検察はさらに、ボルソナロ被告がルーラ氏と副大統領候補、さらには最高裁判事の暗殺計画を知っていたと主張した。 判事たちは、前大統領が陰謀を主導したと認めたほか、元国防相2人、元情報機関長官、元治安担当相を含む共謀者7人も有罪とした。 この計画は軍の支持を十分に得られず失敗に終わったが、2023年1月8日にはボルソナロ前大統領の支持者が大統領府や議会、最高裁などを襲撃する事態に発展した。混乱は間もなく収束し、1500人以上が逮捕された。 裁判を指揮したアレシャンドリ・デ・モラエス判事は、「ブラジルは、選挙での敗北を受け入れられない政治集団からなる犯罪組織のせいで、かつて20年続いた独裁に戻る寸前だった」と述べ、有罪の判断を示した。 (英語記事 Bolsonaro says ankle monitor damage caused by paranoia)