師走に入り忘年会など宴席が多くなる中、佐世保市中心部の繁華街で、スナックやキャバクラなどの飲食店に勧誘する違法客引きが深刻化している。断ってもしつこく付きまとう行為が後を絶たず、佐世保署は「人数も増え、悪質化している」と警戒を強める。一時期は風営法の改正やコロナ禍で鳴りを潜めていたが、グループ間で女性従業員の引き抜きや客の奪い合いが激化していることが増加の背景にあるとみられる。 11月下旬の週末。午後8時を過ぎると、四ケ町アーケードに並行して広がる「夜店公園」一帯に、不自然にたむろする数人ずつのグループが現れた。この夜は確認できただけでも計約30人。1次会を済ませたほろ酔いのサラリーマンや観光客らにターゲットを定め「お店はお決まりでしょうか」と丁寧な口調でまとわり付く。 「500円から千円が相場」。飲食店を紹介する無料案内所の前で声をかけていた客引きが客1人当たりの“成功報酬”を語る。この客引きは歩合制だが、中には固定給で雇われている人もいるという。コロナ禍前から酔客に声をかけ続けているという男性は「今は厳しいが、多い時で店に1日100人以上はつないだ。そうなると月30万円以上は堅く、仕事として“夢”はある」と話す。 飲食店関係者によると、客引きグループは大きく三つ存在する。各グループは複数の系列店を持つ経営グループの指示で動いているとみられ、中には、小遣い稼ぎ感覚の大学生らが違法行為と分からずに雇われているケースもあるという。 飲食店などでつくる佐世保観光料飲組合の加盟店からは「県外から若い半グレたちが流入し、治安が悪くなった」と心配する声が上がる。同署もキャバクラ店の女性従業員の引き抜きを巡るグループ間の小競り合いなどを把握。9月には別のグループの男性を「刺すぞ」などと脅迫した疑いで、20代の男が逮捕される事件も発生した。 同署はグループ間の小競り合いが組織化、凶悪化する危険性があると警戒しており、1カ月ほど前から取り締まりを強化。「客が減り、売り上げが減った」と指摘する飲食店もあるが、署員は客引き行為を見つけるとすぐに駆け寄り、厳しく指導している。 尾塚政一署長も夜の繁華街で陣頭指揮しており「薬物や売春行為などの犯罪の温床につながる。野放しにはしない」と目を光らせている。