茨城県古河市仁連の介護老人保健施設で2020年、入所者の高齢男性2人を殺害したとして殺人などの罪に問われた元職員で同市、無職、赤間恵美被告(39)の裁判員裁判の初公判が10日、水戸地裁で開かれる。来年7月7日の判決まで公判期日は60回に及ぶ予定。捜査段階で黙秘していたという被告と犯行を結び付ける直接証拠は乏しく、裁判では状況証拠の評価が争点になるとみられる。 起訴状によると、赤間被告は同市の老健施設「けやきの舎(いえ)」で20年5月30日に鈴木喜作さん=当時(84)=を、同年7月6日に吉田節次さん=当時(76)=を、いずれも点滴用チューブにシリンジ(注射筒)をつなげて静脈内に空気を注入し、空気塞栓(そくせん)による急性循環不全で殺害したとされる。 赤間被告は同施設で当初看護職として働いていたが、鈴木さんの死後、介護職に変わった。21年12月に殺人容疑で逮捕され、水戸地検は約3カ月間の鑑定留置の結果、刑事責任を問えると判断し、22年4月に殺人罪で起訴した。 赤間被告と被害者2人との間でトラブルは確認されなかったが、鈴木さんの容体が急変する前に、赤間被告が1人で鈴木さんの部屋に入るのを同僚職員が目撃。吉田さんの急変前には、介護職が扱わないシリンジを操作しているのを目撃されていた。被告は不審な動きを職員から詰問され、終業前に退勤してそのまま自主退職していた。 事件は決定的な直接証拠が乏しく、検察側は、目撃証言や医療関係者の専門的な見解、被害者の医療記録などの状況証拠を積み上げて立証するとみられ、裁判ではこれらの評価が争点となる見通し。 県警は当時、吉田さんについては司法解剖したが、鈴木さんは病死として扱われ司法解剖されなかった。このため、搬送先の病院が撮影したコンピューター断層撮影(CT)画像や専門家の意見などで死因を特定したとしている。 裁判は今月10日から来年6月18日の結審まで各月6~11回の期日を予定し、裁判員は、複数回の審理に参加する週が毎月ある。 赤間被告は当時、同市郊外で家族と暮らしていた。自宅は現在空き家になっている。11月下旬、被告を知る女性は「事件のことを含め、その後どうなったのか気になっていた」と話した。