【AFP=時事】ドナルド・トランプ米大統領は15日、映画監督で俳優のロブ・ライナー氏夫妻が殺害された事件を巡り、ライナー氏がトランプ氏を批判したために殺害されたと示唆する「倒錯的」かつ「病的」なコメントをSNSに投稿し、非難の嵐に直面した。 トランプ氏の発言に反応した中には、トランプ氏の熱心な支持者も含まれており、トランプ氏のSNS「トゥルース・ソーシャル」上で異例の否定的な反応の波を引き起こした。 追悼の声が広がる中、トランプ氏は、ライナー夫妻は共和党指導者である自身を批判したことでライナー氏が招いた「怒り」が原因で死亡したと報じられていると主張した。 トランプ氏は自身の政治的成功を誇示した上で、ライナー氏がトランプ氏を攻撃することに「激しく執着し、人々を狂わせた」と述べた。 この発言は、警察がライナー氏の息子ニック・ライナー容疑者を殺人容疑で逮捕したと発表したタイミングで行われ、さらなる反発を招いた。 「こんな発言はバーで酔っ払った男から聞くものだ。米国大統領からではない」と、来年下院を引退するネブラスカ州の共和党議員ドン・ベーコン氏はCNNに語った。 かつてトランプ氏の盟友だったマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は、「政治や政治的敵対関係とは無関係の家族の悲劇」に対するトランプ氏の反応を非難。「多くの家族が薬物依存や精神的健康問題を抱える家族と向き合っている。それは非常に難しい問題であり、特にそれが殺人に至った場合には寄り添う気持ちを持って対応すべきだ」とX(旧ツイッター)に投稿した。 ■トランプ氏、さらにライナー氏を非難 共和党のトーマス・マッシー下院議員はトランプ氏の発言を「不適切で敬意を欠いている」と断じ、同じく共和党のマイク・ローラー下院議員も「間違っている」と非難した。 トランプ氏はこれまでにもSNSで挑発的な投稿を繰り返してきたが、党内からの公然たる非難はほとんど考えられなかった。 ホワイトハウスでの勲章授与式で発言について問われたトランプ氏は、謝罪することなく、ライナー氏への非難を重ねた。 「彼は自分自身を傷つけた…キャリア的に。彼は狂った人のようになった。トランプ狂乱症候群だ」と述べ、「だから私はロブ・ライナーのファンでは全くなかった。どんな形でも、どんな意味でも。彼は我が国にとって非常に悪い存在だったと思う」と続けた。 2019年に匿名で暴露本を出版し、内部批判者として注目されたトランプ政権で国土安全保障省首席補佐官を務めたマイルズ・テイラー氏は、トランプ氏を「死者を嘲笑(ちょうしょう)している」と非難し、「病的な変質者」と呼んだ。 「(共和党上院議員)ジョン・マケイン氏の死後に彼を攻撃したことが、私が政権内から声を上げるきっかけとなった。ロブ・ライナー氏の殺害を嘲笑したことで、トランプ氏への反感がさらに強まった」と述べた。 ライナー氏はトランプ氏の熱心な批判者で、トランプ氏を米国民主主義への脅威と呼び、民主党候補者のために資金を集めていた。 オバマ政権で大統領顧問を務めていた民主党のデービッド・アクセルロッド氏は、トランプ氏の投稿を「倒錯的」と表現。「ライナー家が深い喪失と悲しみの中にあるこの瞬間に、寄り添う気持ちや礼節を欠いていることは悲しく、また本質を露呈している。自分の不満が彼らの悲しみを上回るのだ」 民主党のクリス・マーフィー上院議員は、トランプ氏が「正気を失った」と述べた。「今やロブとミシェル・ライナー夫妻が彼(トランプ氏)を支持しなかったから、自分たちの殺害を引き起こしたと言っている。とても病的だ」【翻訳編集】 AFPBB News