ニューヨーク州・マンハッタン地区検事局が3年かけて捜査・押収した、トルコの遺跡から略奪された数十点の古美術品が、12月8日にマンハッタンで行われた式典でトルコ政府に返却された。 中でも大きなものは、サンタモニカ在住の慈善家で、かつて医療技術分野で活躍したベンチャーキャピタリスト、アーロン・メンデルソーン(74歳)が所有していた、約2000年前のローマ皇帝像の頭部を欠いた大型青銅像だ。「裸体の皇帝(The Emperor as a Nude)」として知られるこの像を、メンデルソーンは2007年、現在は閉店したニューヨークのロイヤル・アテナ・ギャラリーから133万ドル(約2億円相当)で購入した。しかし、それは盗掘の産物だった。 物語は1960年にさかのぼる。トルコ南部、現在はブボンと呼ばれる古代都市リュキアの村人たちが、ローマ皇帝を称える彫像群で満たされた聖域を偶然発見。その後、トルコ法で国家の許可が必要だったにもかかわらず、村人たちは利益を求め、皇帝像を含む13点の彫像を運び出してアメリカ人収集家に売却した。