ロブ・ライナー監督が遺したもの「スタンド・バイ・ミー」反トランプ

<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム> 映画監督のロブ・ライナーさんが亡くなった。78歳。妻ミシェルさんととも自宅で発見された遺体には鋭利な刃物による外傷があり、薬物の問題を抱える次男が殺人などの容疑で逮捕された。何とも痛ましい話だ。 代表作の「スタンド・バイ・ミー」(85年)を撮ったのはまだ38歳の時。4人の少年のひと夏の冒険と、ほろ苦い思いをつづったこの作品は当初限定公開の「小品」扱いだったが、口コミで評判を呼び青春映画の金字塔と言われるまでになった。撮影時15歳だったリヴァー・フェニックスが脚光を浴び、来日時のフィーバーが記憶に残っている。 主題歌となった同名曲は、ベン・E・キングがこの24年前に発表したものだが、せつない大人のラブソングが不思議に少年たちの友情にマッチして聞こえた。この映画が公開されるまではジョン・レノン版で聞いていたので、オリジナル版のストレートな響きも新鮮だった。 どれもこれも映画の根底にあるライナーさんの心優しさが反映されたイメージだと思う。 この4年後の「恋人たちの予感」はロマンチック・コメディーの傑作と言われ、メグ・ライアンとビリー・クリスタルふんする恋人が食事をした「カッツ・デリ」は観光名所となった。この2人が再共演してシーンを再現したCMが昨年放送されるなど、ライナーさんの旧作にはいまだに米国人の心に強く訴えるものがあるようだ。 6年前、「記者たち 衝撃と畏怖の真実」の日本公開を前に来日したときのことをよく覚えている。 イラク戦争の大義名分となった大量破壊兵器の存在に疑問を持った記者たちの奮闘を描いた作品で、会見では「最初は風刺の効いた寓話(ぐうわ)のような作品を考えたが、うまくいかなかった。健全な民主主義は独立した自由なメディアなしには成り立たないことを訴えたかった」と、ドキュメンタリータッチの作品の背景を明かした。 この撮影中に大統領選があり、ドナルド・トランプ氏が当選。来日時には第1次政権の2年目にさしかかっていた。 「彼(トランプ氏)は権威主義、独裁政治のプレイバックそのもの。今、独裁政治と民主主義の闘いのテンションが高まっている」と当時から反トランプの姿勢を明確にしていた。 ライナーさんの死後間もなく、トランプ大統領のSNS投稿が注目された。「私から見れば彼は錯乱した人物だった。彼はわが国にとって非常に有害だったと思う」などのコメントは心なく、常軌を逸したものだったが、トランプ氏にとっては別の意味で「大きな存在」だった証しなのだろう。 「カッツ・デリ」のエピソードからも、ライリーさんが米国人から広く愛されていることが分かる。トランプ氏のSNSは少なからず支持者離れを招くのではないかと思う。 一貫してヒューマンだった作風は、亡くなった後も影響力を失っていない気がする。【相原斎】

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