【社説】大崎第5次請求 一刻も早く再審の扉開け

刑事裁判をやり直す手続きを定めた再審法(刑事訴訟法の再審規定)を改正しなければならない。その目的は、冤罪(えんざい)被害者を速やかに救済するためにほかならない。 大崎事件の弁護団が5度目となる再審請求を鹿児島地裁に申し立てた。法改正の原点に立ち返る契機としたい。 鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった大崎事件で、原口アヤ子さん(98)は殺人罪などで服役した。逮捕から47年間、一貫して潔白を訴え続けてきた。 95年の最初の請求以降、検察の抗告により上級審で覆されたものの、地裁、高裁が計3回も再審を認める決定を出した。 昨年2月に第4次請求を退けた最高裁の決定でも、5人の裁判官のうち1人が反対意見を付けた。最高裁で異論が示されたのは大崎事件では初めてで、その意味は重い。 もはや、確定判決に看過できない疑義が生じているのは明らかである。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に従い、地裁は再審の扉を開けるべきだ。 確定判決によると、原口さんの義弟である被害者は酒に酔って側溝に転落し、隣人2人が軽トラックで義弟宅へ連れ帰った。原口さんは泥酔した姿を見て殺害を決意し、夫や親族と共謀して首を絞めて殺害した、とされた。 弁護団は、側溝への転落などが死因であり、他殺ではないと主張する。今回の請求では、絞殺を否定する医学鑑定や自白の信用性を否定する心理学の鑑定など、五つの新証拠を提出した。 裁判官は、最高裁の判断に引きずられることなく、公正な目で証拠と向き合う責務がある。誤りを正すことに背を向けてはならない。 袴田巌さんが再審無罪となった事件と同様、大崎事件は再審法の不備を象徴する。 再審開始を阻む元凶は、検察抗告と証拠開示のルールがないことだ。検察側が都合の悪い証拠を隠せる構造が温存されている。 大崎事件では、弁護側が開示を求めた証拠について、捜査側が「存在しない」と回答し、裁判所の開示勧告後に出てくる事態が繰り返された。 抗告禁止と証拠開示の拡充は、超党派の国会議員連盟がまとめた再審法の改正案に盛り込まれ、野党6党が法案を国会に提出済みだ。 改めて、一刻も早い成立を求める。 議連とは別に法制審議会も改正論議を進め、来月にも法相に答申する。抗告禁止を見送り、証拠開示を現状より後退させる流れとなっている。 このままでは、冤罪被害者を速やかに救済するという目的は到底達成できない。 法務省は答申に基づく改正案を今年の国会に提出する構えだ。衆参両院は原口さんの5度目の再審請求が持つ意味を理解し、議連案を土台とした法改正を実現しなければならない。改悪は許されない。

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