歌手・タレントの田代まさし氏(69)が今月25日に神奈川県・茅ヶ崎市役所前で行われた地域イベント「茅ヶ崎マルシェ」にゲスト参加し、「一般社団法人Homie子ども未来育成会」代表理事の井上ケイ氏とのトークショーで「いじめ問題」について、自身の体験を踏まえて持論を語った。 田代氏は「僕は今、薬物依存の講演活動をやっています。『お前が言うなよ!』って話かもしれないですけど、経験者だから、その人たちの気持ちが分かる。ケイさんも俺も不良をやってきて、そうした経験があったからこそ、力になれるということを分かっていただきたい」と呼び掛けた。ともに刑務所に収監された期間は約9年。ケイ氏は「(米国の)刑務所で勉強していろんな資格を取った」と振り返り、田代氏は「ケイさんは1回でしょ。俺は3回で(計)9年だから」と付け加えた。 田代氏は1980年代に音楽グループ「シャネルズ」「ラッツ&スター」のメンバーとしてヒット曲を連発。同年代後半から90年代にかけては、志村けんさんに笑いの才能を見いだされ、テレビの人気タレントとして〝マーシー〟の愛称で親しまれたが、2000年代以降は覚醒剤取締法違反などで逮捕・収監を繰り返した。19年に覚醒剤所持で逮捕され、20年11月から福島刑務所で服役。22年10月に出所後、現在は自身のYouTube番組「MARCY'Sちゃんねる」をベースにしつつ、音楽活動も続けている。 そんな過去を踏まえ、田代氏は「今もネットでいろいろ書かれるわけですよ。『このシャブジジイ、死ね』とか『お前、また捕まるんだろう』とか。(社会復帰して)頑張っていてもずっと続くわけですよ」と、いじめの一形態であるSNSでの誹謗中傷を例に挙げた。その上で、昨夏出版した著書「こころの処方箋」に記したマザー・テレサの「愛情の裏返しは憎しみではありません。無関心です」という言葉を引用した。 「この言葉を受け止めた時に考え方が変わった。(中傷する側も)俺のために時間を割いて『死ね』とネットに書き込んでいるんだ…と思ったら、この人は俺のことに無関心ではないなと。確かに傷つくけど、『この人も俺に関心を持って書いてくれているんだ』と思ったら気持ちが楽になった」 さらに、田代氏の体験談は続いた。 「事件を起こして家族に迷惑かかかるから一緒に住めなくなって、別の所にマンションの部屋を借りていた頃、(離れて住む)子どもたちに会おうと、夜中、取材陣がいない時に、自分の車(大型のミニバン)に乗ろうとしたら、その車体の後ろにクギとか10円玉みたいなので『バカ』と書かれていた。俺、悔しかったから、『バカ』って書いてある下に、自分で『じゃない』ってクギで書いた。『バカ』って書かれたまま乗りたくなかったから、『じゃない』って(笑)。そしたら、つらくなかった。『バカ』と書かれたことに対する自分の中でのできる限りの抵抗が『じゃない』。発想の転換ですよ。それで気分が楽になった」 その上で、田代氏は「いまだに『お前、反省してるのか』と叩かれながら、『俺にも原因があるのでは』『どうやったら回避できるか』と考えることを毎日積み重ねて、発想の転換をしています。だから、いじめられている子どもたちに言いたいのは、自分がいじめられる原因を考え直すこと。『どうすればいいのか』というところから自分の考え方を変えていく。例えば、『向こう(いじめる)側の懐に入ってみよう』とか『いじめられないために強くなろう。格闘技を覚えよう』とか、いじめられないための努力も大事だと思います。その姿がメッセージになり、少しずつ状況が変わっていけたらと、俺も信じてやっています」と熱く語った。 一方、いじめ撲滅などの社会奉仕活動を続けているケイ氏は「格闘技のマネをいじめに使っている。あれはよくないです」とSNSで複数の〝暴行動画〟が拡散している現状を指摘。さらに「(加害者側の)親も(ネットで)攻撃されて会社をやめざるをえなくなるといった負の連鎖がすごいですよ」と懸念した。 イベント後も、田代氏は当サイトに対して「ケイさんの活動に少しでも力になりたい。俺も同じような境遇で育っているから、互いにイベントなどで協力をして、今後も活動を重ねていきたい。そして、『バカ』と落書きされても、『じゃない』と自分で書いたように、相手に怒るだけじゃなくて、その状況をいかに自分の中で消化できるかを子どもたちに学んで欲しい」と思いを吐露した。 (デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)