事実上の死刑廃止国・韓国で尹錫悦前大統領に「死刑求刑」の意味 澤田克己

2024年末の「非常戒厳」宣布を巡って内乱首謀罪に問われた韓国の前大統領、尹錫悦(ユン・ソンニョル)被告に死刑が求刑された。ソウル中央地裁での判決は2月19日に言い渡されるが、韓国は「事実上の死刑廃止国」であり、死刑判決が出ても執行される可能性はほぼない。そうした中での死刑求刑をどう見るべきなのだろうか。 ◇死刑執行は97年以降なし 韓国で最後に死刑が執行されたのは1997年のことだ。その後も連続殺人事件などで死刑判決が出ることはあるが、執行はされない。それ以前に判決が確定した死刑囚も執行されないまま収監され続けており、事実上の終身刑のようなものになっている。 執行停止は世論の盛り上がりを受けたからというものではなく、政治主導の決定だった。こうした事情は欧州諸国の死刑廃止と変わらない。韓国の場合、政治囚として死刑判決を受けた経験を持つ金大中(キム・デジュン)氏が98年に大統領となり、政治決断で執行停止を決めたとされる。 韓国ギャラップの世論調査では2010年代以降も「維持」派が6~8割を占め、凶悪犯罪が起きると執行再開を求める世論が高まることもある。それだけに、死刑廃止の法改正までは進んでいないのだが、それでも今さら再開はないというのが常識となっている。 国際人権団体アムネスティ・インターナショナルでは、10年以上にわたって執行がない場合に「事実上の死刑廃止国」と分類している。韓国以外に、アルジェリアやスリランカ、ケニア、ロシアなど23カ国がここに入る。法律で廃止した国と合わせると、計145カ国が廃止国にカウントされている。 ◇遅れる違憲審査 韓国の憲法裁判所は96年と2010年に死刑制度を「合憲」とする判断を出している。ただ、まだ死刑が執行されていた96年には判事9人のうち7人が合憲、2人が違憲としたのに対して、執行停止が10年あまり続いていた時点での2回目の審理では合憲5人、違憲4人となった。世論が大きく動いていないのとは異なる流れだ。

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