【コラム】新年辞を省略した金正恩氏、トランプ氏との関係構築に焦り(2)

◇さらに複雑になった国際情勢 北朝鮮は「自主」と「主体」を強調する国だ。そのため国際社会の変化に鈍感な社会と認識されがちだ。北朝鮮の一般住民が外部と徹底的に遮断された生活を送っているのは事実だが、少なくとも指導部だけは外部動向に敏感に対応する政策を作らなければならない。党と政府の主要幹部が「参考通信」という名で毎朝配布される外信や海外動向を整理した国際情勢資料を義務的に熟読する理由だ。許可された幹部はスマートフォンやタブレットPCを通じて随時外のニュースを確認することもある。表向きは泰然としているように見えても、水面下では慌ただしく動いている。 先月、米国がニコラス・マドゥロ大統領を逮捕・移送し、イランを攻撃しようとする動きを見せていることは、北朝鮮にとって他人事ではない状況だ。次は自分たちかもしれないという判断のもと、対応戦略を練らざるを得ない。米国、中国、ロシアなど朝鮮半島を取り巻く大国の複雑な計算と緊迫した動きも、北朝鮮の立場では厳しい状況だ。昨年6月、イランの核施設を打撃した米国は最近、空母打撃群を動員して「力による平和」を追求している。北朝鮮が「強硬には超強硬」という立場で核を前面に出しているが、米国の力には太刀打ちできない現実を自ら認識しているとみられる。 ◇時間は北朝鮮の味方か ここに最近、北朝鮮の計算をさらに複雑にする動きが現れた。国連安全保障理事会が北朝鮮向け人道支援事業17件について制裁免除を承認した。国連の対北制裁を米国が主導し、李在明政権が対北融和政策を進めている点を考えれば、韓米が北朝鮮を対話のテーブルに復帰させるための共同の呼びかけを送っていると見ることができる。しかし金委員長が「支援」という言葉を辞書から消せと指示したほど外部依存に線を引いており、北朝鮮が容易に応じるかは不透明だ。北朝鮮がこれを対北制裁解除の一環と解釈したとしても、直ちに対話のテーブルに復帰する可能性を期待するのは難しい。核兵器は取引対象ではないとして、核とミサイルで米本土を攻撃できる水準をほぼ完成させつつある北朝鮮の立場では、交渉材料が小さいと見るのは明らかだ。北朝鮮は昨年10月のトランプ大統領の求愛に続く対北制裁解除の動きと関連し、核とミサイルを前面に出した自分たちの戦略が通用し、今や“キジの卵を確保した”と見ている可能性がある。 しかしトランプ政権の残り任期を考えれば、むしろ北朝鮮側が時間に追われている点を直視すべきだ。トランプ大統領の任期は約2年11カ月残っているが、これ以上の再選は不可能だ。最後の1年は次期選挙一色となり、北朝鮮に目を向ける余裕はない。そうであれば実質的な残り任期は約2年と見るのが妥当な推論だ。2019年の第2回米朝首脳会談の時と違い、金委員長にとって意思疎通が可能なトランプ大統領と再び交渉できる機会はない。中国が米国の台湾向け武器売却を巡って会談決裂も辞さない姿勢を示しているが、トランプ大統領は来る4月の訪中の機会に金委員長との会談を望んでいる。北朝鮮にとって党大会より重要なのは、今後2カ月の対米方向の設定だ。宿願だった朝米関係を解くのか、耐乏の行軍を続けるのかの分かれ道になり得るからだ。北朝鮮は“キジも卵も取る”つもりだろうが、すでに確保した卵さえ失いかねないのが国際社会の冷厳な現実だ。 チョン・ヨンス/統一文化研究所長/論説委員

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加