<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム> 麻薬取締法違反容疑などで書類送検され、1月30日に不起訴処分となった一連の問題で活動を自粛していた米倉涼子(50)が10日、243日ぶりに公の場に登場した。東京・ユナイテッドシネマ豊洲で開催され、米倉が登壇した主演映画「エンジェルフライト THE MOVIE」(堀切園健太郎監督、Amazonプライムビデオで13日から配信)完成披露試写会を取材した。 25年6月12日に都内で行われたイベント以来、体調不良などを理由に表舞台に出て来なかった米倉が、どのような顔で現れるのか…そこが、1つのポイントだと考えていた。不起訴から一夜明けた1月31日に、自身の公式サイトで発表した声明の中で「私は、本年1月30日、不起訴処分となりました。これをもって、私に対する捜査は結論が出たものと認識しております」と報告。 一方で「いったい何があったのかを私自身が説明すべきであるというご意見もあろうかと存じます。しかしながら、私が発言することで、その内容が独り歩きし、思いもよらない形で各方面へご迷惑をおかけする可能性もあるため、弁護士の指導を踏まえ、私からの説明は控えさせていただきます」と、一連の問題に関し、それ以上の説明はしない考えも示した。 何事もなかったかのように表に出てくるのは難しいにしても、個人の問題は一区切り着いたとの認識で、作品を背負う座長として毅然(きぜん)として登壇する姿を予測していた。 実際に現れた米倉の姿は、予測とは全く違うものだった。会場に入ってきた表情はこわばっており、その場で意を決するかのように1歩、2歩と大股で踏み込み、ステージに上がった。 一礼すると「はい。米倉涼子と申します。本日はご来場頂き、まことにありがとうございます。本日、こうやって板の上に立たせて頂けるのも、ファンの方々の熱い思い、スタッフの方の手厚いサポートのおかげで、ここにいられることに感謝しております」と口にした。 過度の緊張からか声は震え、常に堂々と大きな声で語る、それまでの姿とは全く違っていた。「久しぶりに(共演の)皆さんと一緒に登壇できていることを、本当に感謝して、うれしく思っております」と口にすると、うつむき、涙した。 遠藤憲一(64)から「良かったね! 涼子ちゃん、元気です!」と声をかけられ、肩をたたかれ、左手を上げられると、また涙。「涼子ちゃんが、こんな緊張しているの見るのを初めて。頑張ってきたね」などと褒められると「緊張してます」と吐露した。 イベント中は言葉が詰まり、もつれ、同じ言葉を繰り返すこともあった。翌11日付紙面に掲載された原稿には「共演陣に支えられ『一生懸命、立っています』と口にする米倉に、騒動以前の“強い女”の象徴のような、威風堂々とした面影は、かけらもなかった」と書いた。 「エンジェルフライト」は、国際霊柩送還士に迫った佐々涼子氏のノンフィクションの実写化作品で、23年3月にドラマ版「エンジェルフライト 国際霊柩送還士」が配信され、その続編として「-THE MOVIE」が製作された。米倉はトークの中で「作者、監督をはじめ脚本家、スタッフ、豪華な出演者、みんなと一緒に心1つ、思い、思いを組み込んだ作品。無事に放送? 公開? 配信ができて、本当にうれしく思っています」と口にしたが、それは心のそこからの本音だろう。 報道各社が今年1月に、関東信越厚生局麻薬取締部が大麻や麻薬を含む液体などを25年8月に所持した疑いで書類送検と報じ、捜索で薬物のようなものが押収され、鑑定の結果、違法なものであることが判明したことまで報じた社もあった。配信できない可能性を一番、恐れていたのは米倉自身ではないだろうか。 予定通り、13日に240以上の国や地域に向けて、世界独占配信がスタートした。 完成披露試写会では、遠藤が「次、連ドラになるといい。もったいない。もう1回、連続ものになってシーズン3になって帰ってくるんじゃないかな。古沢さん、そろそろ書いて欲しい」と、脚本の古沢良太氏(52)に、さらなる続編の脚本執筆をリクエストした。 壇上で声を詰まらせた松本穂香(29)野呂佳代(42)はじめ、共演陣の作品への深い思いもトークの随所から感じられ、作品チームとしてはシリーズの継続は前向きに考えたいところだろう。 米倉も「ドラマシリーズから、ビックリするくらいの支持を頂き、うれしく思います。期待の声があったから映画サイズに仕上がった」と口にしたが、シリーズが継続するか否かは「-THE MOVIE」がどれくらい視聴されるかにかかっているだろう。 映画として1本の作品なので、米倉の一連の騒動で注目度は高まったにしろ、全6話のドラマシリーズ以上の視聴数を稼ぐかは未知数だ。 それ以前に、不起訴処分になったとはいえ、やはり米倉が薬物疑惑の渦中にいたことによる影響を、考慮しないわけにはいかないだろう。10日の完成披露試写会には、NHKとテレビ東京をのぞく民放各局が取材に足を運び、朝の情報番組等で、米倉が不起訴処分になった事実関係を含め、完成披露試写会の模様を放送した。 昨今、薬物事案をはじめとした犯罪や不祥事、コンプライアンス違反を犯した俳優、タレントが、なかなか地上波のテレビ番組に出演できない中、不起訴処分にとどまったことで、なんとか“地上波復帰”は果たした格好だ。 とはいえ、各テレビ局が米倉を即、ドラマに起用したり、バラエティーなどの番組への出演をオファーするかは、麻薬取締法違反容疑などで書類送検された事実がある以上、そう簡単にいくとは考えにくい。 映画や、Amazonプライムビデオをはじめとした有料配信プラットフォームであれば、視聴者が自ら選んで料金を払って視聴するメディアだけに、これまでも薬物事案での逮捕など、不祥事で表舞台から離れた俳優、タレントも、一定の期間を置き“みそぎ”したとみられたタイミングで復帰しており、米倉を起用したければ、オファーする可能性はあるだろう。 ただ「エンジェルフライト」シリーズにおいては、公共放送NHKのグループ会社であるNHKエンタープライズ(NEP)が制作している、ということも看過できないポイントだろう。NEPは、放送法に基づいて設立された総務省所管の特殊法人である公共放送NHKとは違い、番組やイベント、映像作品、デジタルコンテンツの企画・制作やライセンスビジネスなどを手がける株式会社だ。 とはいえ、NHKとは公共性などの理念を共有し、同局の番組の企画・制作をしている。外部の会社との共同制作も行っており、例えばDisney+(ディズニープラス)と共同制作した仲野太賀(33)主演のドラマ「拾われた男」は、22年6月にDisney+で独占配信された後、同10月にNHK総合で放送した。 「エンジェルフライト」も「-国際霊柩送還士」はAmazonプライムビデオでの配信から1年3カ月後の24年6月にNHK BS、25年5月には総合で放送し、同6月7日に放送を終えた上で、同19日に「-THE MOVIE」の製作・配信を発表した。その後、同10月に一部週刊誌が関東信越厚生局麻薬取締部が自宅を家宅捜索したと報じ、一連の騒動が勃発し、今に至る。果たして「-THE MOVIE」をドラマシリーズ同様、NHKで放送できるだろうか? 視聴者が料金を払い、選択して視聴するからこそ配信できたAmazonプライムビデオと、公共放送たるNHKでの放送は次元が違うだろう。 一方で、作品自体の評価は高い。脚本は人気、実績ともに日本を代表する脚本家の1人、古沢氏が手がける。また同氏とタッグを組む堀切園健太郎監督は、94年に明大法学部卒業後、NHKに入局し、01年の連続テレビ小説「ちゅらさん」、07年「ハゲタカ」などNHKのドラマを中心に制作、演出を手がけてきた。 04年から1年間、映画の本場・米ハリウッドにも留学し、映像制作を学んだ逸材だ。中でも、09年のドラマを映画化した12年の映画「外事警察 その男に騙されるな」で監督を務め、その手腕が高く評価された。NHKらしからぬダークな色調の画質かつ、緻密で骨太な作風に定評がある。さらなる続編への展開は「-THE MOVIE」が明確に結果を出せるか…そして、NHKという枠を超え、その手腕、動向が注目されてきた気骨あふれるクリエーター堀切園監督が腹を決めて前に進めるかにかかっているのではないだろうか? 何より米倉自身、果たして次に向かって進める状態にあるかが、最も重要なところだろう。 13日に配信された「-THE MOVIE」出演者の特別インタビュー映像では、収録ものだけに元気な姿を見せていたが、完成披露試写会では「一生懸命、立っています」と口にしてしまうような状態だ。 記者も以前、インタビューした時に感じたが、米倉は表舞台に立つと、常に堂々とし強さを感じさせるが、舞台裏では共演者のみならず、取材で向き合った記者にも心配りを忘れないなど周囲に非常に気を使う、繊細な心を持った女性だ。完成披露試写会の壇上で、表舞台で見せる、いつもの強い姿とは別人のように弱々しい米倉を見て、本格復帰までの道は険しいと思わざるを得なかった。 芸能界の関係者の間でも「国民的な俳優になりながら、なぜ私生活で、こんな問題を起こしたのか?」「あれだけの存在になった以上、私生活においても、自身の立場を考えなければ、いけないのではないか?」などの厳しい声が出ている。 そうした、もろもろを乗り越えて、米倉は再び表舞台で輝けるのか? 「エンジェルフライト」シリーズの作品性の高さを認める記者として、同シリーズ含め、今後の動向は注視していきたい。【村上幸将】