まるでホロコースト…トランプ政権が無実のベネズエラ系市民約180人を捕まえて移送した恐ろしすぎる「刑務所」

2026年1月3日(日本時間2日)、ドナルド・トランプ大統領は南米ベネズエラに軍事攻撃した。毎日新聞記者の國枝すみれさんは「トランプのベネズエラ敵視は今に始まったことではない。トランプは、ベネズエラのギャングがアメリカを暴力的に侵略しているという荒唐無稽なフィクションを作りあげ、それを理由に大統領就任後、大勢のベネズエラ人を国外に追放していた」という――。(第3回) ※本稿は、國枝すみれ『アメリカ 崩壊の地をゆく』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。 ■突然奪われた「真面目な移民」の自由 2025年3月15日、トランプ政権は200人以上のベネズエラ人の若者を中米エルサルバドルの巨大刑務所に移送した。 ぞっとした。テレビ画面には、飛行機から降ろされるなり、小突かれ、引きずられ、まるで一昔前の牛か馬のように手荒に扱われている若者たちが映し出された。手錠をかけられ、髪を剃られ、下を向いて、床に座らされている映像も流れる。 この日にエルサルバドルに送られた238人の職業は、床屋、パン屋、洗車係、美容師――。大半は、ギャングどころか、地元の人たちの生活を支えるごく普通の人々だ。その後も数十人が送られた。CBSテレビによると、75%に犯歴がなかった。 トレン・デ・アラグア(TdA)ギャングとみなされて、この刑務所に送られたベネズエラ人の若者の1人が、コロラド州オーロラ市に住んでいたニクソン・ペレス(19)だ。 ニクソンは家族思いの働き者として近隣住民に知られていた。もちろん犯歴もない。23年8月、テキサス州イーグルパスからアメリカに入国し、亡命申請中だった。「ニクソンがエルサルバドルに移送されたと知って、2日続けて悪夢をみた」。移民の住宅支援をしているヴィ・リーブスが暗い声で言う。 ■かつて見た刑務所は地獄だった ニクソンの母親は、テレビ画面にちらりと映った息子の姿を携帯電話で撮影し、ヴィに送ってきた。「彼女の苦しみは想像もつかない。(テレビで息子の姿を見て)生きていたと安堵すると同時に、今度はいつ顔を見ることができるかわからない。絶望的な気持ちになったに違いない」 よりにもよってエルサルバドル――。15年ほど前、エルサルバドルの刑務所を訪れた記憶がよみがえり、背筋が冷たくなる。半裸の男たちが、狭い房に押し込められていた。全員が全身に入れ墨をしたギャングの構成員だ。対立するギャング団、MS13とバリオ18のメンバーは別々の房に分けられていた。同じ房に一緒に収容すると、殺し合うからだ。 その日は地元高校生の刑務所見学の日だった。「道を踏み外すと、こういう結果になる」と教えるためだ。学生たちは列をつくり、囚人がいる牢の前を歩く。囚人は、女子高生を見ると、鉄格子の間から手を伸ばして、彼女たちを掴もうとする。女子高生は、恐怖に顔をゆがめ、足早に歩く。顔を背け、目を伏せたまま、囚人を一度も見ることができない娘もいる。 ギラギラ光る男たちの目、鉄棒のすき間からわらわらと伸びる手、薄暗い刑務所に響く笑い声――。見学した高校生たちはギャングになることはないだろう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加