大川原化工機の国賠訴訟控訴審 9日に取り調べ立ち会いの警察官らを証人尋問

外為法違反罪などに問われ、後に起訴が取り消された精密機械製造会社「大川原化工機」(横浜市)の社長らが、東京都と国に損害賠償を求めた訴訟の控訴審は、警視庁公安部の取り調べが適正に行われていたかどうかが争点の一つとなっている。9日には、取り調べに立ち会うなどした警視庁の警察官3人の証人尋問が行われる。法廷でどのような証言をするか注目が集まる。 医薬品などの製造に使用される噴霧乾燥機は、生物兵器への転用の恐れがあるとして、平成24年に国際的に規制対象となり、日本でも25年に一定の条件を満たす製品の輸出には経済産業省への許可申請が必要となった。省令は「定置した状態で機械内部の滅菌又は殺菌をできるもの」などと規定された。 警視庁公安部は乾熱による殺菌も含むと判断。令和2年、噴霧乾燥機を中国に無許可で輸出した外為法違反容疑で、大川原社の社長や元取締役ら3人を逮捕し、東京地検は3人を起訴。これに対し、同社側は自社の機械で72回にわたって温度を測る実験を繰り返し、殺菌ができないと主張。地検は3年7月、起訴を取り消した。 社長らは同年9月、都と国を提訴。1審東京地裁判決では、公安部の取り調べで、大川原社の元取締役に「殺菌」の解釈を説明したやりとりが取り調べメモなどになく、取調官が解釈をあえて誤解させ、認める趣旨の供述調書に署名指印するよう求めたとし、「偽計を用いたり、欺罔した取り調べで違法」と認定した。双方が控訴した。 控訴審で都側は、元取締役に対し、「殺菌」の解釈を誤解させた事実はないとしている。 都側の控訴理由書などによると、元取締役は平成24年の規制導入時には経産省の担当者から規制内容について詳細に説明を受け、社内の会議でも「基本的に輸出許可が必要」と説明。27年には米国の取引先から噴霧乾燥機内の特定の箇所から菌が発生することへの対策について問い合わせを受け、「熱風を装置内に行き渡らせることにより殺菌することが可能」と提案したとしている。 都側は「規制に詳しい元役員が殺菌の解釈を誤解することはありえず、それを取調官も認識していた。『殺菌』の解釈をあえて誤解させた事実はなく、取り調べは適正だった」と主張している。

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