妻を殺害した罪に問われている、元県議会議員・丸山大輔被告の裁判員裁判は、23日に判決が言い渡されます。 判決のポイントを専門家に聞きました。 「妻を殺害したのは私ではありません」 証言台で無罪を訴えた元県議会議員の丸山大輔被告。 検察側: 「物盗り犯を装った偽装工作を行った」 「犯人は被告人以外あり得ない」 犯人は丸山被告として懲役20年を求刑した検察側。 弁護側: 「丸山さんが犯人である直接的な証拠は全くない」 「殺害する動機はない」 最後まで丸山被告の無罪を主張した弁護側。 注目の判決の行方はー。 塩尻市の元県議・丸山大輔被告は2021年の9月29日、自宅を兼ねた酒蔵の一階事務所で、妻・希美さんの首を圧迫して、殺害した罪に問われています。 事件前日の夜、同僚議員と長野市の議員会館で酒を飲んでいたという丸山被告はその途中でー。 「原稿の準備をする」 翌日に控えた一般質問の準備をすると周囲に伝えて飲み会を中座。 検察側の主張は、これが被告のアリバイ工作で、その後は車を運転して塩尻市の自宅へ移動し希美さんを殺害。 議員会館の近くをはじめ、現場との間にある6箇所の防犯カメラには、丸山被告の車に似た車両が往復する様子が映っていたとされます。 ただ、この事件で丸山被告が直接的に犯人であることを示す証拠はありません。 裁判で検察側は、丸山被告の犯行を立証するため間接的な証拠を積み重ねましたが、弁護側は初公判で、「疑わしきは罰せず」という無罪推定の原則に基づき、「公平中立に判断してほしい」と裁判員に呼びかけました。 間接的な証拠を積み上げて犯人であるかを判断する場合、最高裁判所では、被告が犯人でなければ、「合理的に説明ができない事実が含まれているか」を基準としています。 この基準について司法に詳しい元検事の飽津史隆弁護士は。 「平たく言うと、法廷に提出された証拠の中に、被告人以外の第三者が犯人であることを示す証拠が、どの程度含まれているか」 弁護側は、「丸山被告以外の物盗り犯による犯行」と主張していますが、判決のポイントとして、飽津弁護士が最も注目するのが現場に残された「足跡」です。 現場となった事務所の中にあった金庫からは現金が一部なくなっていました。 靴の足跡は、出入り口から金庫に向かって一方向にだけ残されていました。 飽津史隆弁護士: 「足跡のつき方がとても中途半端なんです。例えば物盗りに入って奥さんに見つかりました、びっくりして奥さんの首を絞めましたって言うなら、首を絞めた付近にもっとドタドタいっぱいの足跡がついて当然なはず。それがないんですね」 足跡をはじめ、現場の痕跡については、検察側が特に強調した点であり、物盗り犯を装った被告の偽装工作であると主張。 さらにこの足跡が10年前に丸山被告が履いていた「テニスシューズ」の靴底とデザインが一致したことも、被告の関係性を強めると主張しました。 一方、弁護側は、物盗り犯の靴の付着物が薄れて足跡が残らなくなった。 被告が事件当時テニスシューズを持っていたことは証明されておらず、偽装工作をした証拠もないと主張しました。 裁判所はこの「足跡」をどう認定するかが、ひとつのポイントになると専門家は話します。 飽津史隆弁護士: 「物盗りの犯行の可能性が払しょくできないと認定されれば、とびます(無罪になる)間違いなく」 一方で、間接的な証拠を個別に見るのではなく、総合的に捉えることも重要な要素になると言います。 飽津史隆弁護士: 「一個一個とらえればそういう(第三者の犯行)可能性も確かにあるのかもしれないけど、可能性がそんなに大きくないことを重ねていくと、社会的事象として起こりにくいことがポンポン重なるということは、逆にいうと、その人(被告)しかあり得ないという判断に結びついていく」