韓国政府には海外養子縁組者のルーツを確認できるよう助ける義務がある【寄稿】

1960年代から1990年代初頭にかけて韓国からデンマークへ養子に出された人々で構成される「デンマーク韓国人真相究明グループ」(DKRG)の約50名が、2022年8月23日、ソウル中区(チュング)の「真実・和解のための過去事整理委員会」(真実和解委)の前で記者会見を開き、 「これまで虚偽に基づいて生きてきた海外養子には真実を知る権利があることを宣言し、アイデンティティと知る権利を剥奪された数千人の養子について、真実和解委が積極的に調査を行うよう要請する」と述べた。彼らは「海外養子は養子縁組機関単独では行えないため、当時の韓国政府が積極的あるいは消極的に違法な養子縁組に介入し、人権を侵害したかどうかを明らかにしていただきたい」と訴えた。 これを受け、真実和解委は2年7カ月にわたる調査を経て、昨年3月26日、367人を対象とした「海外養子縁組過程における人権侵害事件」に関する真相究明の結果を発表した。米国やデンマーク、スウェーデンなど11カ国に養子に出された人々の養子縁組記録などを確保して調査した結果、56件の事例で人権侵害が確認されたと明らかにした。真実和解委は、1955年から1999年に海外へ養子に出された児童は14万1778人に上ると推計し、政府が養子縁組斡旋機関を適切に管理・監督しなかったため、人権侵害が発生したと判断した。真実和解委は政府に対し、公式謝罪、養子縁組者の市民権取得状況の実態調査と後続対策の策定、身元情報の改ざんなどの被害者に対する救済措置を勧告した。このうち、書類不備などの理由で真相究明が認められなかった申請者たちは、2月26日に発足した第3期真実和解委で受理されることを望んでいる。 韓国は1970〜1980年代、「児童輸出国」だった。海外養子縁組は、朝鮮戦争直後の1953年、戦争孤児のための福祉政策の一環として始まった。ところが、戦争の傷が癒え始めた1970年代中・後半から、海外養子縁組が急増した。さらに、1980年代後半までのいわゆる「3低時代」の経済好況期には、海外養子縁組は「児童輸出」とみなされ、本格的に「産業化」された。2023年5月11日付の「聯合ニュース」の報道によると、1953年の朝鮮戦争終結後から2022年までに海外へ養子に出された児童の数は16万8427人に上る。戦争直後に住む場所を失った児童たちに新しい家庭を見つけてあげるという意味で始まった制度だが、韓国が先進国の仲間入りを果たしたとされる2023年になっても、毎年100人を超える児童たちが外国へと旅立った。世界各国の国際養子縁組統計を集計する「国際社会サービス(ISS)」の2022年の発表によると、2020年時点で韓国の国際養子縁組児童は266人。これはコロンビア(387人)とウクライナ(277人)に次いで3番目に多い数だ。 一方、2024年7月19日から出生申告制度と危機妊娠支援、保護出産制度が同時に施行された。これは、海外養子縁組の原因ともなった出生未登録児童の発生を防止し、児童をより万全に保護するために設けられたものだ。それぞれ「家族関係の登録等に関する法律」と「危機妊娠および保護出産の支援と児童保護に関する特別法」を根拠としている。出生申告制度とは、児童が医療機関で生まれた場合、その出生の事実と出生の情報を直ちに地方自治体に申告する制度である。一方、妊娠や出産の事実が周囲に知られることをはばかる一部の妊婦は、これを避けるために医療機関以外の場所で出産し、児童を遺棄する恐れがある。保護出産制は、このように危機的状況にある妊婦がやむを得ない場合に、仮名で医療機関で出産し、出生申告まで行えるようにした制度である。保護出産制の問題点を指摘する市民団体などは、「この制度はもっぱら産婦のみを優先し、子どもの立場を考慮していないため、保護出産制よりも、未婚の親に対する偏見をなくす取り組みと共に、妊娠・出産・養育のための支援体制を強化する取り組みが先行されるべきだ」と批判している。 保健福祉部は昨年10月1日、韓国が「国際養子縁組における児童の保護及び協力に関する条約」(ハーグ国際養子縁組条約)に加盟したと発表した。1993年5月に採択された同条約は、国際養子縁組の過程において児童の基本権を保障するものだ。昨年7月19日、条約履行のための法的基盤となる「国内養子縁組に関する特別法」と「国際養子縁組に関する法律」が整備された。併せて政府は、国内の児童保護体制の根本的な革新のため、海外養子縁組の段階的な中止を公式化し、児童福祉に対する国家の責任を強化することにした。これと共に重要な国際条約として「強制失踪防止条約」がある。これは、国家機関または国家の許可・黙認の下で、逮捕・監禁・拉致などにより自由を剥奪し、生死・所在を隠蔽して法の保護の枠組み外に置く「強制失踪」を禁止する条約であり、2010年12月に発効した。韓国国会は2022年6月に加盟案を可決したが、関連法案はまだ具体化されていない。 海外養子たちは、実の親など自分たちと離れてしまった家族をきちんと見つけることができるのだろうか。ソウル行政裁判所行政3部(チェ・スジン裁判長)は昨年4月17日、実の親の同意がなければ養子が実の親の情報を得られないようにした養子縁組特例法関連条項に違憲の疑いがあるとして、憲法裁判所に違憲法律審判を提請した。裁判所は、養子たちの実親情報に対するアクセス権は「人間が享受し得る天賦的かつ本質的な権利に該当する」とし、この条項が基本権を過度に制限すると判断した。さらに「統計的に実親が情報公開に同意するケースは拒否するケースの3~4倍ほどになるが、実親の同意の意思が確認されないケースまで不同意とみなして公開しないことは、プライバシーの保護に過度に偏り、養子縁組者の知る権利を過度に制約する」と指摘した。これは現在、憲法裁判所に係属中である。 崇実大学産学協力団の研究チームは、2023年1月10日、国家人権委員会に「海外養子の人権状況の実態調査を通じた人権保障策の研究」報告書を提出した。研究チームが海外養子658人を対象に行った調査結果によると、調査対象者の約70%以上(68.7〜96.1%)が、韓国の養子縁組機関が海外養子の人権を十分に保護していないと回答した。韓国政府が自身の人権を十分に保護していないという回答は90%以上(91.0〜98.1%)に上った。研究チームは「参加者たちは、海外養子の人権保護の責任が養子縁組機関よりも韓国政府にあると認識している」と分析した。これまで死角に置かれていた海外養子の人権問題は、政府が2029年までに海外養子縁組を禁止することを決定したことで、徐々に改善の兆しを見せている。しかし、過去に起きた数々の基本権侵害は、政府の真剣な努力なしには解決が難しい。今回発足した第3期真実和解委員会に寄せられた海外養子被害事件(去る3月25日現在316件)に対する真相究明に期待したい。 イ・ソクテ | 元憲法裁判官(お問い合わせ [email protected] )

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