社説:当番弁護士の減少 冤罪防ぐ制度 守る議論必要

冤(えん)罪を防ぐセーフティーネットを、いかに補強するかが問われている。 逮捕直後に容疑者のもとに駆けつけ、無料相談に1度応じる「当番弁護士制度」に登録する弁護士の割合が減っている。 弁護士に占める登録比率の全国平均は2014年の47%をピークに下落し、25年は31%(約1万4千人)と、過去最低を記録した。 全国の弁護士数は増えているのに、都市部ほど落ち込みが顕著だ。第二東京弁護士会は9%と1割を切った。2割台の大阪府では昨年7月、「緊急事態宣言」と題したメールを会員に送り、登録を呼びかけたという。 京都府は48%、滋賀県は60%と約半数を保つが、もとより弁護士の少ない地域は、制度の維持に不安を抱える。 制度は大分県などで1990年に始まり、2年後に全国で導入された。登録する弁護士の中から毎日の当番を割り当て、容疑者や家族の依頼を受けて留置・勾留されている場所に出向き、法的な助言をする。 刑事事件では、公費負担の国選弁護人制度があるものの、逮捕から勾留の可否が決まるまで最長72時間は対象外である。その空白を埋める形で、各弁護士会が自主的に運営している。 容疑者が希望した場合、引き続き国選弁護人を務めることも少なくない。 逮捕直後の混乱状態にある容疑者が、刑事手続きの流れや黙秘権などを知らないまま、強引な取り調べを受け、不利な供述調書を作られてしまいかねない。駆けつける弁護士の存在意義は大きく、冤罪を防ぐことにもなる。 担い手が減っている背景には、負担の重さと報酬の低さがあるという。 受付件数は近年、3万〜4万件もある一方、出動した場合の手当は1万〜2万円で、他の業務も抱える中、国選と合わせても「割に合わない」との声が上がる。 登録の減少で割り当てが増える悪循環もある。かつては全弁護士が担うものとの共通認識があったが、近年は刑事弁護を専門とする人に任せればいいとの考えも広がっているようだ。 子育てや介護などがあり、勤務時間外での呼び出しに対応できずに登録から外れる人や、高齢になり、活動実績のない会員もいる。 問題は費用を含め、弁護士会任せとなっている制度の在り方だろう。 容疑者の黙秘権や弁護士選任権は、憲法が保障する。逮捕直後から国選弁護人を付けられるようにするなど、根本的な改革に向けて議論をすべきではないか。 自白偏重による強引な取り調べで、冤罪事件が今も絶えない。制度の意義を改めて広く共有し、充実を図るための連携を関係機関で深めたい。

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