わいせつ行為に盗撮も…“信頼”を悪用する医師や教師たち 「日本版DBS」で子どもたちを守れるか

子どもと接する職業に就く人の性犯罪歴確認を義務付ける「日本版DBS」が、今年12月に施行される。教育や保育などの現場が対象になる一方で医師は対象に含まれておらず、制度の実効性や対象範囲をめぐって議論が起きている。 「診察」と称し、医師がわいせつ行為に及ぶ事件はこれまでにも多数報告されている。静岡県の歯科医師の男は不同意わいせつ、性的姿態等撮影、児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕、その後男は起訴された。男はタオルで患者の目元を隠し「歯列矯正に必要な行為」として舌を動かさせ、自身の陰茎を舐めさせ、その様子をスマートフォンで撮影していた。複数の女性が被害を受けたとみられる。 2021年から2022年にかけ、東京・江戸川区の美容外科クリニックの院長が女性患者らに麻酔をかけて性的暴行におよんだ。被害者はおよそ20人とみられている。 2023年、東京・豊島区の医師が20代の女性患者の下半身を「婦人科系の検査」と偽り、約1時間触り続け、その様子をメガネ型のカメラで撮影した疑いで逮捕された。医師の私物パソコンには、ほかの複数人の女性に対しても、わいせつな行為をしているとみられる動画が記録されていた。 2025年、千葉県・旭市の医師が、診察中に女性患者の下着の中に手を入れ胸を触るなどした疑いで逮捕された。被害者は複数人いるとみられている。 また、「精神科医による患者に対する不適切行為」が国会で問題視されたこともあり、医道審議会では性犯罪を理由とした医師・歯科医師の処分が毎回のように出続けている。 信頼の悪用は教育現場でも発生しており、2025年には名古屋市の小学校の教員らが勤務先や校外学習で女子児童らを盗撮し、画像や動画を仲間内で共有。グループメンバー7人全員が起訴された。 ほかにも小学校校長が女子児童に恋愛感情を抱き、校長室で複数回にわたりキスした事件。塾講師がスマートフォンで小学生の女子児童の下着などを盗撮し、第三者に共有した事件など、後を絶たない。 文部科学省の調査によると、2023年度に性犯罪などで処分された教員は320人で、過去最多を記録。 そんな中、国は新しい制度を動かすことになった。それが「日本版DBS」と呼ばれる制度だ。そもそもDBS(Disclosure and Barring Service)とは、2012年にイギリスで確立された、子どもと接する職場で働く人の性犯罪歴をチェックし、子どもたちの安全を守る制度。対象は子どものみならず、介護や医療が必要な脆弱な大人に広がり、性犯罪に限らず窃盗や薬物などの犯罪歴がある人は、就業禁止者リストに掲載される。 イギリスのDBSでは年間700万件以上(労働人口の2割)の証明書を発行し、約9万人に子どもに接する仕事をすることを禁止している。 日本版のDBSが本格的に議論されるきっかけとなったのは2020年、ベビーシッターが児童にわいせつな行為をしたとして、逮捕されるケースが相次いだことが背景にある。過去の性犯罪歴を見抜く仕組みがなかったことを受け、以来厚労省やこども家庭庁を中心に、有識者会議で議論が続いた。そして2024年6月、日本版DBS「こども性暴力防止法」が成立した。これにより、子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を法務省に照会することが義務付けられる。 しかしこの制度には「揺れた論点」があった。それはどんな犯罪歴を対象にするのか。照会対象とされるのが不同意性交罪、不同意わいせつ罪、児童ポルノ禁止法違反、痴漢・盗撮など。一方対象外は下着窃盗、ストーカー規制法違反、示談で不起訴になったケースだ。つまり示談が成立し不起訴になれば、事業者が照会をかけても犯罪事実としては出てこない。「見えない加害者」は制度の隙間に残される結果となった。 そして、もう一つ「揺れた論点」がある。それは誰を対象とするのか。日本版DBSの対象は幼稚園、小中高校、認可保育所、認定こども園、児童福祉施設など。一方、学習塾、スポーツクラブ、認可外保育所などは義務ではなく、国の認定を受けることで制度を利用できる。対象外となったのは、個人事業主の「ベビーシッター・家庭教師・塾」などで、さらに病院・歯科医院などの医療機関も対象外となった。 「職種をもっと幅広くすべきでは」という声も上がったが、職業選択の自由や加害者更生に対する過剰な制約になり得ると、注意が必要だと判断された。一方で日本版DBSでは今後、医療機関も対象とすることを検討するよう求められている。 そこでこども家庭庁は、子どもらの被害実態を初めて調査(全国5000の医療機関が対象。1113機関から有効回答)。アンケートを実施し、医療従事者から患者への性被害行為と判断されたのは、全部で36件。被害にあった患者の年齢層は19歳から39歳が20人で最も多く、13歳から18歳の未成年も1人確認された。 対象外となった“隙間”が、ようやく見え始めているが、仮に医療機関まで対象を広げたとして、果たして被害は防げるのだろうか。 (『ABEMA的ニュースショー』より)

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