「釜山(プサン)モンキースパナ事件」の被害者が国を相手取り起こした損害賠償訴訟で敗訴した。被害者側の控訴で事件は来月17日に1回目の弁論が開かれる。 「釜山モンキースパナ事件」は、2023年3月に30代の男性が別れた交際相手の職場を訪ねて、元交際相手の頭をモンキースパナで殴りつけるなど凶器を振り回した事件だ。加害者の男は被害者の女性から別れを通告されると、自宅と職場を何回も訪ねストーカー行為に及んだ。女性がこれを警察に通報すると、男は被疑者として取り調べを受けた当日に女性の職場を訪ねて行き犯行に及んだ。男は殺人未遂などの容疑で2024年3月に大法院(最高裁)で懲役15年の形が確定した。女性は肝臓と肺の破裂、頭部の裂傷などにより緊急手術を受け、数カ月にわたり病院で治療を受けた。 ◇「緊急逮捕せず、取り調べ過程で通報の事実ばらす」 女性はその後、警察のずさんな対応により被害を受けたとして国を相手取り慰謝料1億5000万ウォン(約1590万円)と治療費約400万ウォンを請求する損害賠償訴訟を提起した。女性は「事件の約1週間前に男の特殊脅迫により負傷し警察に通報したが、警察は現行犯で逮捕しておらず、翌日の2月24日に自身の職場近くで男の車が見つかったのに特別な措置を取らなかった」と主張した。 女性は犯行当日の警察の対応を問題にした。男は関係回復を要求して2023年3月2日午後1時30分ごろに女性の職場を再度訪ねてきた。その直後警察署に移動して被疑者尋問を受けた。男は取り調べ直後である同日午後5時ごろ再び女性の職場を訪れて凶器を振り回した。女性は警察が取り調べの過程でストーカーとして通報した事実を露出し、緊急逮捕など身柄確保措置を取らなかった誤りがあると主張した。 警察は捜査過程で違法はなかったと反論した。女性が2月23日の通報当時に負傷したとは述べておらず、スマートウォッチの支給も望まなかったという。男の車が目撃された後には緊急応急措置や事案に合わせたパトロール措置もし、事件当日にも臨時シェルターへの移動を勧めたとした。 ◇裁判所「適切な措置はなかったが警察の過失ではない」 裁判所は警察の手を上げた。ソウル中央地裁は昨年11月、「提出された証拠だけでは警察が違法な職務行為をした点を認めるのに不足する」として女性敗訴の判断を下した。担当判事は2月23日の特殊脅迫当時に男に逃走の懸念などがないとみて緊急逮捕しなかった警察の措置が顕著に不合理だとはいえないと判断した。 事件当日の警察の措置には不適切な部分はあるが、違法とまではいえないとみた。裁判所は「午後1時30分の男の職場訪問は緊急応急措置違反。警察としては電子装置装着、留置などの暫定措置を申請する案などを検討しこれを遅滞なく進める義務があった」とした。ただ警察がこれを認知した時刻と犯行時刻の間隔が1時間にすぎない点を考慮すれば「警察がそのような措置を取ることができなかったことに対し過失があるとは評価できない」とした。 警察が男を取り調べる過程で女性の通報の事実が露出し犯行の口実を提供したという主張に対しては「断定し難い」とした。男は殺人未遂の犯行後、「担当警察官の携帯電話に女性の携帯番号から電話が来た事実を目撃し、これに対し腹が立ったのも犯行動機のひとつ」と供述した。ただ裁判所は男が実際に女性からかかってきた電話を目撃したのかは確実でないとみた。また、犯行動機には復縁を断った女性に対する恨み、家族に対する憤怒などが複合的に作用したと見た。 これに先立ち、「釜山回し蹴り事件」では被害者が国を相手取り起こした損害賠償訴訟で1審勝訴の判決を受けている。被害者は捜査機関が性暴行が疑われる状況をまともに調査せず、検察が殺人未遂でだけ加害者を起訴したとして損害賠償訴訟を提起した。1審で裁判所は「性暴行の状況が強く疑われるのに捜査機関は状態を具体的に確認したことが明確な実の姉の陳述を確保しなかった」として捜査の不備を認めて1500万ウォンの賠償判決を下した。