指揮官が突然姿を消しても、置き去りにされた宿題まで消えるわけではない。巨人は28日のソフトバンク戦(東京ドーム)に4―8で敗れ、橋上秀樹監督代行(60)の新体制では27日の同戦で5―1と初勝利を挙げた直後に再び失速した。最大目標のリーグ優勝、日本一奪回は変わらない。それでも足元には、阿部慎之助前監督(47)が道半ばで手放した「未完案件」が、重く積み上がっている。 阿部前監督は25日夜、自身の18歳の長女への暴行容疑で現行犯逮捕され、26日未明に釈放。同日朝に山口オーナーへ辞任を申し出て受理された。突然の退任劇で宙に浮いたのは、単なる指揮官交代ではない。就任以来、勝利と並行して進めようとしてきた育成の設計図そのものだ。 象徴的なのが、2022年ドラフト1位の浅野翔吾外野手(21)である。高卒野手の大成は球団の悲願。阿部前監督も就任1年目の24年から一軍で起用し、非凡な打撃センスを評価してきた。今季も23日に一軍昇格させ、阪神3連戦で先発起用したが10打数1安打。28日に登録を抹消され、またしても定着への壁にはね返された。 主砲不在の穴埋めも道半ばだ。メジャー挑戦で昨オフにチームを離れた岡本和真内野手(29=ブルージェイズ)の後継候補として、昨季は秋広優人内野手(23)らを放出し、ソフトバンクからリチャード内野手(26)を獲得した。だが、移籍後は打率2割1分1厘と安定感を欠き、今季はコンディション不良などで一軍出場なし。和製大砲育成の青写真も、完成形は見えないままだ。 捕手陣も同じ構図にある。岸田行倫捕手(29)の台頭、大城卓三捕手(33)の復調は明るい材料だが、原辰徳元監督(67)から託された「阿部慎之助2世」の育成は、結局、形になり切らなかった。球団周辺では「やはり阿部前監督でなければ解き切れない課題だったのではないか」との空気も漂う。 もちろん、橋上代行のもとで戦いは続く。チーム関係者は「勝利と育成の両立を掲げる以上、新体制で一つずつ解決するしかない」と話す一方で「来季以降に監督が代われば、育成方針も当然変わる。残りシーズンで何を継続し、何を切り替えるのかを考え続ける必要がある」と頭を抱える。 急に船頭を失った巨人に、過去の宿題を棚上げする余裕はない。阿部前監督の辞任で終わったのは一つの政権だけではなく、育成構想の途中経過でもある。未完案件の山は、今のチームに重くのしかかっている。