『田鎖ブラザーズ』“もっちゃん”は山中崇の代表作に 空気を一変させた怪演と脇役以上の力

“名バイプレイヤー”という言葉が世に広く知られるようになり、主演やヒロインを演じる俳優だけでなく、「この人が出ていればおもしろそう!」という視点でもドラマや映画を楽しめるようになった。現在放送中の『田鎖ブラザーズ』(TBS系)に出演している山中崇もその1人である。 山中が演じたのは、町中華「もっちゃん」の店主である茂木幸輝。真(岡田将生)と稔(染谷将太)からは店名と同じく“もっちゃん”と親しまれている。殺された2人の母親・由香(上田遥)が「もっちゃん」のパート従業員だった縁もあり、茂木は幼くして両親を失った真と稔を見守り続けている。大人になり真と稔が警察関係者となってからも2人は「もっちゃん」で食事をし、喋ってはいけない事件のことをカウンターで話して叱られたり、晴子(井川遥)と会うことを拒む稔に「このまま時間が経ったら、もっと会いづらくなるぞ」と背中を押したりと、時には親のように、時には兄のように接してきた。 両親殺害の大きな謎に挑む兄弟のオアシスとなる茂木。そんな構図に安心して、茂木ならばどんなことがあっても兄弟の味方でいてくれると思っていたのに、だんだん雲行きが奇しくなり、ついに大きく覆されることになったのが6月5日に放送された第8話である。 事件の真相に辿り着きつつある真と稔の姿を目にした茂木は、あるものを持って、辛島家へ。2人と会話する時はちょっと疲れが見える60代の気さくなおじさんなのに、この時はときどき後ろを振り返りながらよたよたと歩いていた。足元がおぼつかない様子はとても60代には見えず、突然老け込んだようだ。辛島家についてふみ(仙道敦子)と話す茂木は、母親に叱られて泣きじゃくる子どものようであり、「大丈夫、みんなの幸せは変わらない」とふみに言われながらも震える茂木の姿は、彼が長年抱え込んできた闇の深さと大きさを感じさせるものとなっていた。 インタビューコメントで山中は、演じる茂木について「とてもピュアな人」と語り、「どこか大人になり切れない、『ピーターパン』のような一面があって、いろいろな経験をしてきたんだろうなと感じさせる部分もある」と話していた(※1)。その鋭い分析が、場面が移り変わるごとに、人が変わったようになる茂木の姿に凝縮されていると言っても過言ではないだろう。 本作は、ひとつの絶対的な真実を追い求める兄弟の物語でありながら、正義と悪といった単純な構図では割り切ることができない状況や感情をもうひとつのテーマとして丁寧に描いているが、第8話で描かれた、真と稔と茂木がそれぞれに真実を知りながら銭湯で風呂をともにする場面はその真骨頂だ。真実が分かったとしても、真と稔が追いかけている両親の事件は時効が成立しているため、犯人を逮捕することができない。真と稔は、茂木の犯した罪を知りながら、茂木は目の端に映る2人がその罪を知っていることを知りながら「真と稔と風呂に入るなんて」「付き合い長いけど、なかったもんな」「本当に……長かったな……」とはっきりと言葉にしなくともお互いに思いを通じ合わせているところは、ある意味、本作の“最終回”だった。 モヤモヤとしたものが真と稔に残る中でも、事件は起きる。真の元へは茂木から拳銃が届き、稔は湖から上がったという変死体を検死しようとして、それが茂木であることを確認する。 “バイプレイヤー”とは、映画やドラマにおいて主役を引き立てる脇役のことを指す。だが、真と稔に寄り添っていたが、最終章へ向かうところでドラマの雰囲気や方向性を大きく変えた茂木を演じた山中には脇役以上の力があった。本作は今後の山中を語る上では欠かすことのできない代表作のひとつとなった。 「両親を殺害した犯人を探し出すこと」が最初の目的だった真と稔だが、今度は事件の起こった背景やその奥に“黒幕”の存在があることに気がついてしまった。知ってしまったからには全てを明らかにしたい。この思いは真と稔がずっと抱いているものだ。“田鎖ブラザーズ”はここから、本当の敵に対峙していくことになるのだろう。 参照 ※ https://realsound.jp/movie/2026/05/post-2388418.html

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