ビデフォード、メイン州、7月15日 (AP) ー トランプ米政権当局者は14日、1週間のうちに致命的な射殺事件が2件相次いだことを受け、移民・税関捜査局(ICE)の捜査官に対し、原則として車両の停止要請・臨検を一時停止するよう指示した。事情を知る関係者が明らかにした。 この方針転換は、北東部メイン州で13日、ICE捜査官がコロンビア人の男性ドライバーを射殺したこと、さらにその前週にもヒューストンでドライバーが射殺されたことを受けたものだ。昨冬にミネソタ州でアレックス・プレティ氏とレネー・グッド氏が殺害されて以降、広く非難を浴びていたICEの強制執行手法に対する批判が再び燃え上がっている。 14日には南部フロリダ州でも、移民捜査官との遭遇中に3人目の男性が死亡した。当局によると、今回は28歳の男性が移民局および他の連邦捜査官から逃走中にトレーラーにはねられ死亡したという。 匿名を条件に語った関係者によると、刑事逮捕状の執行時や提携機関との協力時など例外的なケースは除外されるという。メイン州選出のアングス・キング上院議員(無所属)の広報担当者も、国土安全保障省(DHS)からICEによる車両ストップ停止について連絡があったと明かした。 メイン州では14日、コロンビア国籍のヨハン・セバスティアン・ドゥラン・ゲレロ氏(26)が射殺されたことを受け、数千人規模の抗議デモが行われた。 DHSは13日、不法滞在中で国外退去の最終命令を受けているとみられる人物の自宅を捜査官らが監視していた際、捜査官が「市民の安全を危惧して」ドゥラン・ゲレロ氏を射殺したと発表した。X(旧ツイッター)への投稿では、該当の家から出てきた車をICEが止めようとしたところ、運転手が車両で逃走を図ったため捜査官が発砲したと説明している。 しかし、これはキング上院議員が事前に述べていた内容とは異なる。キング氏によれば、マークウェイン・マリン国土安全保障長官から「男性が車両を武器として使用しようとしたため捜査官が発砲した」と説明を受けたという。キング氏はまた、捜査官らが逮捕状を執行しようとしていたものの、射殺された男性に対するものではなかったともマリン氏から聞いたと明かした。 ICEを管轄するDHSは、射殺に至る詳細な経緯を求めるメール取材に対して回答していない。 退任を控える南米コロンビアのペトロ大統領は、Xへの鋭い投稿で、この射殺を「米政府の手による標的絞り込みの殺害」と非難した。 トランプ米大統領と公然と対立してきたペトロ氏は、トランプ氏に対して説明を求めるとともに、ICE捜査官がドゥラン・ゲレロ氏を「権利のない下等な存在」として扱ったと主張した。 この射殺事件はメイン州内でも激しい怒りを引き起こしており、14日にはビデフォードとポートランドの間に位置するスカボローのICE留置施設外に数百人の抗議者が集まった。 主催者の一人は集まった群衆に対し、「あいつらは殺人者だ。今すぐ我が州から出て行け」と訴えた。 メイン州選出の連邦議会議員団は同日、「包括的かつ透明性があり、迅速な調査」を要求した。 ドゥラン・ゲレロ氏の射殺は、トランプ政権による移民取り締まり強化以降、ICEが致死的な武力を行使した少なくとも9件目の事例となった。 写真ではドゥラン・ゲレロ氏の車のフロントガラスに弾痕が確認できるが、事件に関与した捜査官はボディカメラを着用しておらず、多くの疑問が残されている。発砲時に捜査官がどれほど車両に近かったのか、捜査官がドゥラン・ゲレロ氏に停車を命じたのか、そしてなぜICEが彼を市民への危険とみなしたのかといった点が不明なままだ。 ICEの広報担当者は声明で、「捜査官の安全を守り、犯罪者を街から排除するために、常に手順の見直しを行っている。ただし、法執行の戦術については開示も議論もしない」と述べた。 「移民問題担当ボス」ことトム・ホーマン氏は14日、報道陣に対し、捜査の進展を見守る必要があると語った。 「捜査官が不適切あるいは違法な行為を行ったと判断されれば、相応の責任を問われることになる」とホーマン氏は述べた。 連邦機関と協力して調査を進めているメイン州司法長官事務所によると、初期の供述では、ドライバーが休職処分となった捜査官(氏名未公表)の方向へ逃走しようとしたことが示唆されているという。 同州選出のもう一人の上院議員である共和党のスーザン・コリンズ氏は、DHS監察官室がFBIと連携して調査を進めているとマリン長官から説明を受けたと明かした。 近隣住民や公的記録によると、ドゥラン・ゲレロ氏は車が停止した場所から約46メートル離れたアパートに住んでいた。現場は質屋とコインランドリーの向かい側にあたる。 AP通信が入手した近くの店舗の防犯カメラ映像には、白い車が交差点にゆっくりと近づき、何度か旋回する様子が映っている。法執行機関のSUVがその進路を塞ぎ、2人の捜査官が運転席のドアを開けてぐったりとした遺体を引っ張り出した。 ダニエル・ブーシェ氏は「パン、パン、パン」という音を聞いて交差点に駆けつけたという。 「彼の顔は血まみれで、頭も血だらけだった」とブーシェ氏は語る。「被害者がはっきりと『止まろうとしたんだ』と言うのが聞こえた」 ブーシェ氏によると、発砲した捜査官は彼の近くまで歩いてきたという。 「その捜査官は私を見て『彼が私をひき殺そうとしたんだ』という趣旨のことを言った。正確な言葉までは覚えていないが」とブーシェ氏は振り返る。 「メイン移民権利連合」と「プレセンテ!」の2つの支援団体によると、ドゥラン・ゲレロ氏は米国での就労許可を得ていたという。 近隣住民によると、ドゥラン・ゲレロ氏は英語を話せない様子だったため会話を交わすことは滅多になかったものの、親しみやすいおなじみの顔だったという。 (日本語翻訳・編集 アフロ)