極秘の捜査会議、段ボール300箱の押収物 2年間の捜査の突破口は

東京女子医科大学(東京都新宿区)の新校舎棟の建設工事をめぐり、業務報酬名目で計1億円超を不当に支払わせて同大に損害を与えたとして、同大元理事長の岩本絹子容疑者(78)が背任容疑で警視庁に逮捕された。岩本容疑者をめぐっては、さまざまな「疑惑」が指摘されてきた。長期捜査の裏には、何があったのか。 2023年2月、警視庁の捜査員や国税関係者らは秘密裏に会議を開いた。関係者によると一連の捜査のきっかけは、岩本容疑者の金銭を巡る不自然な流れについての情報提供で、国税局側は、同大や岩本容疑者に関する資金の流れを精査していた。 翌3月、警視庁は同大卒業生から背任容疑の告発を受理し、捜査が始まった。この容疑を含め不透明な資金の流れは複数あったが、捜査は難航した。 背任罪が成立するには(1)自分や第三者の利益または加害の目的がある(2)任務に背く行為がある(3)財産上の損害を与える――の3要件がそろうことが必要だ。 捜査幹部が当初「大学の金をやりたい放題やり、私的消費していたという単純な話ではない」とし、「『大学のためだった』という説明から一歩踏み出し、大学に損害を与えたなどと立証するにはハードルがある」と語るなど事件化に慎重な見方もあった。 警視庁が同大や岩本容疑者の家宅捜索に踏み切ったのは昨年3月。一般社団法人法の特別背任容疑での捜索で、岩本容疑者宅などはあくまで「関係先」だった。 ■突破口は「建築アドバイザー」報酬 警視庁はその後、岩本容疑者の側近らの任意聴取を進め、捜索で押収した段ボール約300箱分の資料の解析を進めた。「かけらを拾い集めながら組み立てていく作業」(捜査幹部)だったという。 突破口となったのが、大学関連施設工事の「建築アドバイザー」として業務報酬名目で建築士に支払われた約3億円だった。

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