秋の味覚として親しまれる栗。しかし、隣の家の栗の木から自分の庭へ実が落ちてきたことで、思わぬ隣人トラブルに発展してしまうケースがある。「自分の敷地内に落ちているんだから自由に食べていいだろう」と拾って食べたら、隣人から「人の家の栗を勝手に盗むな!」と泥棒扱いされてしまうことも。 では実際に、自分の敷地内であっても隣家から落ちてきた果実を勝手に処理することは法的に問題があるのだろうか。越境した枝や落果への正しい対処法について、まこと法律事務所の北村真一さんに話を聞いた。 ー自分の敷地に落ちた隣家の栗は、法的に誰の所有物ですか? 自分の敷地内に落ちてきた栗であっても、法的な所有権は木の所有者(隣人)にあります。果実は木から離れた後も、元の木の所有者に帰属するのが原則です。民法上、自分の敷地に入ってきたからといって自動的に自分の所有物になるわけではありません。 「自分の敷地内にあるから好きにしていい」という解釈は法的に通用せず、他人の財産を無断で取得した扱いになります。落ちてきた栗であっても勝手に自分のものにはできないため、勝手に拾って消費しないよう注意が必要です。 ー勝手に拾って食べたり処分すると、どんな罪に問われますか? 他人の所有物である栗を無断で拾って食べたり持ち去ったりした場合、窃盗罪(刑法235条)や占有離脱物横領罪(刑法254条)に問われる可能性があります。また、勝手に潰したり捨てたりした場合は器物損壊罪(刑法261条)や、民法上の損害賠償請求の対象となります。 現実的に果実数個で即座に逮捕される可能性は低いものの、法的には明確な違法行為です。感情がこじれて警察沙汰や賠償請求へ発展するリスクがあるため、無断での利用や処分は避けましょう。 ー落ちてきた栗の回収や掃除を、隣人に要求することは可能ですか? 隣人に対して栗の回収や清掃を要求することは可能です。隣家の樹木から落ちてきた果実や落ち葉によって敷地が汚されたり損害を受けたりしている場合、所有権に基づく「妨害排除請求」として隣人に除去や回収を求める権利があります。 また、落果で庭の設備が損壊した場合は修理費用等を請求できる場合もあります。勝手に処分するのではなく、隣人に回収を依頼するか、敷地に立ち入って回収することを許可するなどの話し合いを行うのが望ましい解決策です。 ー越境している栗の枝を、勝手に切っても法律上問題ないですか? 一定の要件を満たせば自ら切除してもかまいません。具体的には、①隣人に枝の切除を催告したのに相当期間内に切除しない場合、②所有者やその住所が不明な場合、③急迫の事情がある場合です。 何の催告もせず突然勝手に枝を切る行為は依然として違法(器物損壊等)となります。まずは隣人に枝の切断を要請し、相手が応じない場合に初めて正当な手順を踏んで自ら切り落としが可能になります。 ●北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士 大阪府茨木市出身の人気ゆるふわ弁護士。「きたべん」の愛称で親しまれており、恋愛問題からM&Aまで幅広く相談対応が可能。 (よろず〜ニュース特約ライター・夢書房)