村木厚子さん「冤罪を生む構図は変わっていない」 郵便不正事件から15年 取り調べ・人質司法・証拠開示を訴える

「全く同じようなことが頻繁に起きています」――元厚生労働事務次官の村木厚子さん(70)は9月24日、東京都内の日本記者クラブで訴えた。2009年に大阪地検特捜部に逮捕され、のちに無罪が確定した郵便不正事件から15年以上。いまも冤罪を生む構図は変わっていないと訴え、取り調べと調書、人質司法、証拠開示の是正を求めた。 * * * 厚生労働省の局長だった村木さんは09年6月、障害者団体向けの郵便割引制度を悪用した事件の捜査の延長で、制度利用に必要なうその証明書発行に関与したとして逮捕された。 その後、大阪地検特捜部が描いた「捜査の見立て」に合わせるため、不正への関与を認めたとする部下の供述調書が作成され、起訴された。村木さんは一貫して無罪を主張し、翌10年9月に大阪地裁で無罪判決が言い渡され、確定した。 事件から15年以上が経過した今も、「冤罪を生む構図は変わっていない」と強調する。 大阪の不動産会社社長が大阪地検特捜部に逮捕・起訴され、冤罪となった「プレサンス事件」や、警視庁公安部の強引な捜査が問題となった「大川原化工機事件」がある。このような事件を仕立て上げ、取り調べで弱い人を責めて自白を引き出していく同じような構図の事件が繰り返されているという。 ■刑事司法の三つの問題点 自身の経験から、村木さんは日本の刑事司法の「知られざる真実」として、三つの問題点を挙げた。 1点目は、「取り調べと調書」だ。 「彼ら(検察)のストーリーに関係がない部分は、どんなに話をしても書いてはもらえません。一文字も調書になりません」 検事から「証明書を出して実際に渡したんだよな」と問われ、「証明書は手渡しせず、郵送です」などと何度説明をしても、そうした発言は一文字も調書には反映されなかった。 また、事件では、村木さんが部下に、虚偽の証明書発行を指示したとする調書がつくられた。しかし、指示を受けたとされた係長とは、一度も言葉を交わしたことがなかった。係長は裁判で、検事が事実と異なる調書を勝手に作成し、署名を迫ったと証言。早く保釈されたかったため署名してしまった、と涙ながらに明かし、村木さんの関与を否定した。 「方針が決まれば目的に向かって突き進むのが検察という組織です」 2点目は、身体拘束が長期化する「人質司法」だ。 村木さんは逮捕翌日、手錠と腰縄をつけられ裁判所に連れていかれた。裁判官から容疑を否認しているかが確認されたものの、言い分を聞かれることはなく、わずか1分ほどで勾留が決まった。 勾留されれば外の情報が入らない。仕事、家族、健康への不安や心配が重なる。「とりあえずここはサインして裁判で戦おう」とうその自白に追い込まれてしまう構造があるという。 3点目は「証拠は誰のものか」という問題だ。 検察が家宅捜索で押収した証拠のうち、何を裁判に提出するかは検察側が選ぶ。村木さんは、その仕組みを「カーテン」に例えた。 検察側はカーテンの内側ですべての証拠を確認できる。一方、弁護側はカーテンの向こう側に何があるかを想像しながら、証拠開示を求めるしかない。 自身の事件でも、無罪を裏付けるフロッピーディスク(FD)の存在を検察から知らされなかった。 検事に、証明書がいつ発行されたかわかるFDなどがあるはずだと訴えても、「紙は出てきたけど、そういうものは家宅捜索で押収できなかった」と説明された。だが、FDは存在し、しかも、主任検事がFDの日付データを改ざんしていた。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加