北朝鮮で事業を営んでいた際に逮捕・収監され、後に解放された韓国系米国人のドンチョル・キムさん(73)が韓国・ソウルで新潟日報社の取材に応じ、北朝鮮で「拉致された日本人」と名乗る複数の人と会ったことを明らかにした。北朝鮮は拉致問題について「解決済み」としているが、有識者は「日本人拉致被害者が北朝鮮の地方部にもいる可能性を示す証言だ」と指摘する。(報道部・横山志保) キムさんは北朝鮮北東部の羅先(ラソン)地区でホテル経営などを行い、戦争などで韓国から北朝鮮に来て帰れなくなった人や在日朝鮮人らと広い交友関係を持っていた。 支援を求めたり相談に来たりする人たちの中に、 拉致された日本人もいたと明かす。面会したのは2000年代後半から、拘束される15年までの時期だったとみられる。 ある女性は、中国との国境近くの会寧(フェリョン)からキムさんの元を訪ねてきた。女性は「自分は日本人で、若い頃に無理矢理北朝鮮に連れてこられた」などと明かした。当時、女性は60〜70代のように見えたという。 別の男性は船関連の仕事があるとだまされて北朝鮮に連れてこられ、キムさんに会った当時も船の修理の仕事をしていた。また日本人だという女性の中には拉致された後、工作員に日本語を教えていた人もいた。 「7〜8人の拉致された日本人と話をした」というが、キムさんは日本語ができないため朝鮮語で会話した。その人たちの名前や出身地など身元につながる具体的情報は覚えていないが、多くが海岸近くの地域から拉致されてきたという。 キムさんは「特に女性たちの生活は苦しく、十分に食事もとれていないようだった」と語る。 日本人拉致被害者について日本政府は17人を認定し、柏崎市の蓮池薫さん(69)ら帰国した5人を除く12人の救出を目指している。また認定被害者のほかにも拉致された可能性がある人がいるとの指摘もある。これに対し、北朝鮮側は「8人死亡・4人未入国」との主張を繰り返し、拉致問題に進展は見られない。 キムさんは「現地で会ったどの人も、今ではかなり高齢になっている。拉致問題の解決のために、私にできる協力は何でもしたい」と言葉に力を込めた。 これまでに複数回、キムさんに話を聞いたという特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は「全てが拉致被害者かどうかは分からないが、一部の証言は極めて詳細で信頼性がある。平壌周辺だけでなく、地方にも拉致被害者がいた可能性を示す傍証になる」と評価する。