額に巻いた赤い鉢巻きは、亡命チベット人2世の詩人で活動家、テンジン・ツゥンドゥ氏(53)のトレードマークである。2002年、チベットの独立を目指して活動する決意を示すために締めた。外す条件はチベットの解放だ。初来日したテンジン氏が1日、産経新聞のインタビューに応じた。インド北部ダラムサラを拠点に、詩作や抗議活動を通じて中国共産党政権による統治に反対してきた。鉢巻きを締めて24年。「鉢巻きは、毎日決意を新たにするためのものだ。きょうも何かができる素晴らしい機会があると言い聞かせている」と語る。■非暴力を貫くチベットの土を初めて踏んだのは1997年、20代前半のときだった。インド北部ラダックから国境を越え、ひそかに入った。「チベット人の中で暮らし、いつか革命を起こしたかった。逮捕され、殴られ、拷問され、殺される可能性があることは分かっていた。それでも行った」中国当局に拘束され、収容所に3カ月間入れられた後、インドへ追放された。殴打や蹴りを受けたが、他のチベット人政治犯に比べれば「何でもないほど軽かった」という。手足だけでなく首にも鎖を付けられたチベット人を目にした。「外の世界と接触できないことが最大の心理的拷問だった。法的な支援もなく、人は希望を失うと精神を病む」2002年、中国の朱鎔基首相のムンバイ訪問に合わせ、高層ホテルの足場を14階までよじ登り、「FREE TIBET」と書かれた横断幕を掲げた。05年には温家宝首相の訪印時に、ベンガルールの高さ約60メートルの塔に登った。インドで逮捕され、裁判になったのは16回に上り、要人訪印前の一時拘束は含まないという。チベット亡命政府が中国の主権下で「高度な自治」を求める中道路線を掲げるのに対し、テンジン氏は独立を主張する。ただ、ダライ・ラマ14世が説く非暴力の原則は共有する。「世界のどの国からも国家として認められていない祖国を、世界第2の大国から非暴力で解放する。これ以上に大きな冒険があるだろうか」チベット仏教徒だが、信仰は寺院で祈ることだけではないと考える。