アイオニ・ウェルズ米州特派員、ティンシュイ・ユン記者南米ブラジルで4日、大統領選の投票が行われ、右派のフラヴィオ・ボルソナロ氏(45)の得票が現職の左派大統領ルイス・イナシオ・「ルラ」・ダ・シルヴァ氏(80)を上回ったものの、有効票の過半数を得られなかった。このため、上位2人による決選投票が10月25日に行われることになった。投票を済ませたルラ大統領は、今回の選択は民主主義か「野蛮」かのどちらかだと警告した。ボルソナロ氏は、「ブラジル国民を解放したい」と述べた。開票率98.81%の時点で、ボルソナロ氏の得票率は47.24%、ルラ氏は44.91%だった。ボルソナロ氏は、右派のジャイル・ボルソナロ前大統領の息子。前大統領は2022年の前回大統領選でルラ氏に敗れた後、クーデター未遂事件を首謀した罪で禁錮27年の実刑に服している。今回の選挙は接戦で、選挙期間中はルラ大統領がわずかにリードしていた。ボルソナロ氏の得票結果は予想を上回った。第1回投票で敗退した他の大統領候補の中には右派の候補者もいたことから、決選投票はボルソナロ氏が有利とされている。これまでにラテンアメリカの大半の国は、ドナルド・トランプ米大統領に同調する右派の大統領を選んできた。ラテンアメリカ最大の面積と経済規模を誇るブラジルが、それに続くかどうかが注目されている。■両候補と二極化する国内ルラ氏とボルソナロ氏は、現在のブラジル政界で二大有力者。今回の選挙戦でブラジルは再び左派と右派で二極に割れた。主権、犯罪、経済、汚職などが有権者にとって最大の関心事になっている。ルラ氏は、貧困層が多い北東部で人気が高く、特に低所得者層、カトリック教徒、女性に支持されている。大統領として、2002年、2006年、さらに2022年からの任期に続き、4期目を目指している。2022年10月の選挙では、当時のジャイル・ボルソナロ大統領を2%未満の得票差で破った。これはブラジル史上最も僅差の大統領選挙だった。ルラ氏は2023年1月1日に大統領に就任したが、同月8日、前大統領を支持する数千人がブラジリアの政府庁舎を襲撃した。治安部隊が介入し、約1500人が逮捕された。ボルソナロ前大統領は、服役前から再選への立候補を禁じられたため、代わりに長男のフラヴィオ氏を擁立した。ボルソナロ前大統領の妻、ミシェル氏は3日、上院議員に選出された。フラヴィオ氏は、当選した場合、父親と、2023年1月8日に政府庁舎を襲撃した支持者たちに恩赦を与えることを公約している。フラヴィオ氏は国内南部で支持を集め、裕福な有権者や福音派キリスト教徒の間で人気が高い。■アメリカとの関係ブラジル最高選挙裁判所の長官は4日、外国による選挙干渉の証拠は見つからなかったと述べた。投票日に向けてルラ大統領は、ブラジルの「主権」を自分の選挙運動の重要な柱とした。アメリカがブラジルの選挙に干渉し、影響を与えようとしているとも非難した。大統領は、国防費の増額を公約している。一方、フラヴィオ・ボルソナロ氏は今年初め、ブラジル最大のギャング2つをテロ組織に指定するようアメリカ政府に働きかけ、成功した。ブラジル政府は7月、ブラジルの選挙制度について疑念を抱かせようとしているとして、米国務省職員2名へのビザ発給を拒否した。アメリカ側はこれを「根拠のない」措置だと反論した。これに先立ちフラヴィオ氏は、外国の外交官たちを前に、ブラジルの投票用機械はヴェネズエラのものとそもそもは一緒だと、事実無根の発言をしていた。トランプ米大統領は昨年、ボルソナロ前大統領が大統領選の結果を覆そうとしてクーデターを企てた罪などで有罪になったことを口実に、ブラジルに高税率の関税を発動したり、一部の高官や裁判官に制裁を科したりした。フラヴィオ・ボルソナロ氏が勝利すればブラジルは、トランプ政権が麻薬密売対策のため中南米の親米諸国と結成した「米州の盾」連合に加わり、対米関係を強化する可能性が高い。フラヴィオ氏は、中国とは「経済的に実務的な」関係を維持すると公約している。ブラジルにとって中国は、大豆と牛肉の重要な輸出先で、ブラジル最大の貿易相手国としてアメリカを追い抜いている。■主な選挙課題銀行家ダニエル・ヴォルカロ受刑者が中心となったブラジル史上最大級の金融詐欺事件を受けて、今回の選挙戦では汚職が重要な争点となった。フラヴィオ・ボルソナロ氏は、父親の伝記映画の製作費提供をヴォルカロ受刑者に依頼したことを認めた。これに先立ち、フラヴィオ氏が1億3400万レアル(約40億5700万円)を要求している音声録音が流出していた。ルラ大統領もこのスキャンダルに間接的に影響を受けた。警察は、受刑者が逮捕を免れるためにアレクサンドル・デ・モラエス最高裁判事に助けを求めた可能性を指摘。モラエス判事は一切の不正行為を否定している。モラエス氏はルラ大統領に任命された最高裁判事ではないものの、ボルソナロ前大統領のクーデター裁判を主導したことから、ルラ大統領の盟友と見なされている。犯罪と治安の悪化も、有権者にとって大きな懸念事項だった。ブラジルの殺人発生率は低下しているものの、有権者の目に触れる機会の多い携帯電話窃盗などの街頭犯罪は増えている。暴力や麻薬密売も依然として深刻な問題となっている。フラヴィオ氏は、ブラジルのギャングをテロ組織に指定し、エルサルバドルにあるような厳重警備刑務所を建設すると公約している。父の前大統領は、在任中に銃所有の規制を緩和した。ルラ大統領は、アメリカ政府がブラジルのギャングをテロ組織に指定したことを批判しているものの、犯罪組織の資金ネットワークを取り締まり、殺人事件の捜査手続きを改善し、刑務所に投資するなど、さまざまな改革に着手してきた。今回の大統領選では、経済も主要課題となっている。フラジルでは個人の債務水準が高く、経済成長も鈍化している。ルラ大統領によるさまざまな社会福祉事業は、その政権を特徴づけるものとなっている。とりわけ、子どもが確実に教育を受け続け、ワクチンなど医療を受けられるよう低所得世帯に給付金を提供する「ボルサ・ファミリア」事業や、大学の新設が、ルラ政権の功績となっている。こうした事業は、何百万人ものブラジル人を貧困から救い出したと評価されている。ルラ大統領は、ブラジルが豊富にもつレアアース鉱物への投資拡大やデータセンターへの投資拡大を支持し、ブラジルが確実に利益を得られるよう、政府として強力に介入してきた。アマゾン川河口付近での石油掘削探査も支持しており、これは環境保護活動家の間で物議を醸しているが、アマゾンにおける環境保護の強化と森林破壊率の削減において実績がある。ボルソナロ前大統領の任期中には、森林破壊は著しく悪化した。フラヴィオ・ボルソナロ氏は、公的債務の上限設定と政府支出の削減、社会福祉制度の見直し、重要鉱物資源部門の強化などを公約している。(英語記事 Brazil election goes to run-off as right-wing Flávio Bolsonaro wins first round)