[社説]所信表明と米兵事件 再発防止 首相の責任で

「このような凶悪な事件の発生は極めて遺憾であり、日本政府として米側に強く抗議する」 高市早苗首相は衆参両院本会議の所信表明演説冒頭で、米海兵隊員が女性への強盗殺人容疑で逮捕された事件に言及した。被害者への哀悼と遺族へのお悔やみを述べるとともに、米軍関係者の綱紀粛正と事件の再発防止の徹底を強く求めた、と述べた。 憲政史上初の女性首相である。基地あるがゆえに起きた犯罪、女性の人権が脅かされ続ける現状にどんな言葉を発するのか注視していた。事の重大性から発言を追加したのだろう。ただ、内容は前日に投稿したXとほぼ変わらなかった。 米軍への再発防止策を求めるのは当然だ。問題はこれまでの再発防止策の限界が明らかで抜本的な対策となっていないことである。基地と兵員の大幅な削減なしに、女性の命や人権を守ることは不可能といえる。 所信表明で首相は、日米同盟の重要性を強調し、年末までに安保3文書を見直すことを明言した。 抑止力強化の施策には具体的に触れる一方、沖縄関連では前回同様、「普天間飛行場の一日も早い全面返還」「強い沖縄経済」といったスローガンを繰り返した。米軍に加え、自衛隊基地増強で軍事要塞化が進む県民に、負担軽減が実感できる道筋は示されていない。 米軍基地が過度に集中し女性の人権が脅かされている現状に目を向け、高市首相は、実効性ある再発防止策へ自ら動くべきである。■ ■ 臨時国会で高市政権が、最優先課題に据える飲食料品の消費税率引き下げに関し、財源悪化への懸念を踏まえ「市場の信認を得られるよう赤字国債に頼らず確保する」と言明した。 だが、2年間で10兆円にもなる財源はあいまいなまま。野党の大半は減税案に反対する。物価対策として即効性を欠くとの批判もある。打撃を受ける外食産業や中小農家への支援策も、不十分だ。消費税導入後初の減税は、システム改修などに膨大な手間と費用がかかる。 食品消費税が8%から1%に下がっても、物価上昇が続けば実際に店頭価格が下がるか疑問視されている。そして戻す際には政治的、経済的コストを要する。 少数野党の声にも耳を傾け、何が、真に国民生活に資する政策なのか、熟議を尽くしてほしい。■ ■ 召集された臨時国会では、閣僚の資質を疑う問題も浮上している。簗和生農林水産相が、自身を衆院選で応援しなかった首長がいる地元自治体の予算を「カットした」と発言した問題は、謝罪や撤回では済まされない。予算は削減されており、真相究明が急務だ。 沖縄県知事選では与党系候補が勝利したとたん減額傾向だった沖縄関係予算が増額される方向となった。 予算は国民の税金が原資である。国民生活を左右する予算を人質に、自治体や住民を動かそうとする強権的な手法は自民党の体質なのかと改めて、疑問を感じざるを得ない。

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