怪しいメールやSMSが届いたら、ChatGPTに「これって詐欺?」と聞いてみよう

特殊詐欺の被害が急増しています。警察庁によると、2026年1月~8月の被害額は2360.7億円で、前年同期より588.4億円増えました。また、2026年上半期の集計では被害額・認知件数ともに60代が最も多く、被害額の約8割を50代以上が占めています。 詐欺の手口は次々と変わり、メールやSMSも本物そっくりに作られています。怪しいと思っても、家族が離れて暮らしていたり夜遅かったりして、すぐに相談できないこともあるでしょう。 そんなとき、ChatGPTに文面を見せて意見を聞くという手があります。詐欺を100%見抜くことができるわけではありませんが、気軽に相談できる「もう一人の目」にはなります。■ 週に2500万人が、ChatGPTで「詐欺かも」を確認している ChatGPTを提供する米OpenAIは9月18日、世界で週に約2500万人が、ChatGPTを使って不審なメッセージやメール、ウェブサイトを確認していることを明らかにしました。詐欺について確認する質問は、1週間に1億3000万回を超えるとしています。 高齢者向けの取り組みも始まっています。OpenAIは9月16日、高齢者のIT活用を支援する米国の団体と、米国10都市でChatGPTの無料ワークショップを開催しました。当初1000人を予定していましたが、実際には1200人が参加したそうです。 そこで教えられたのが、怪しいものに出会ったら「立ち止まり、考え、聞く」という行動です。詐欺師は「今日中に手続きしないと使えなくなる」「今すぐ支払わないと逮捕される」などと急がせ、考えたり誰かに相談したりする時間を奪おうとします。いったん手を止めてChatGPTに聞くだけでも、その流れを断つことができます。 米国では、AIを詐欺対策に特化させた取り組みも行われています。マサチューセッツ州で高齢者住宅を運営する非営利団体が、AIでメッセージを判定する「SeniorShield」を入居者向けに試験導入しました。 使い方は簡単で、怪しいメールやSMSの文面、スクリーンショットなどを送ると、詐欺の可能性やその理由、取るべき行動が表示されます。利用開始から最初の5カ月間では、102人の入居者が682件の確認を行い、204件が詐欺、184件が不審と判定されました。利用者への調査では、81%が詐欺判定機能に満足し、75%が試験後もSeniorShieldを使い続けたいと回答したそうです。 日本でも生成AIを使うシニアは増えています。総務省の「令和8年版情報通信白書」によると、生成AIサービスを使った経験がある60代は33.5%で、前年の15.5%から2倍以上になりました。それでも、生成AIを使わない理由では「使い方が分からない」が38.8%に上り、調査した4カ国で最も高くなっています。ぜひ、怪しいメッセージの確認から試してみてください。■ 怪しい文面を貼り付けて、理由と次の行動まで聞く 使い方は簡単です。届いたメールやSMSの文面をコピーしてChatGPTに貼り付け、「このメッセージは詐欺ですか? 怪しい点と、次に何をすればよいか教えてください」と質問します。スクリーンショットでもOKです。 国民生活センターには、普段利用しているアプリの名前で届いたメールを信じてしまった80代の人の相談が寄せられています。「登録している支払い方法に確認が必要」「更新が遅れるとアプリを購入できなくなる」と書かれたメールからウェブサイトを開き、カード番号などを入力したところ、その後、約20万円のネットショッピング利用を知らせるメールが届きました。 こうしたメールは、リンクを開く前にChatGPTへ文面を見せます。その回答には「支払いを急がせている」「メール内のリンクからカード情報を入力させようとしている」「正規のアプリや公式サイトから確認するよう案内していない」といった怪しい点が示されます。よく分からない説明があれば、「なぜここが怪しいのですか?」と続けて聞いてください。 試しに、ドコモSMTBネット銀行を騙ったと思われるメールの画面のスクリーンショットをChatGPTに渡して聞いてみると、「これはフィッシング詐欺と判断してよいメールです」と判断してくれました。対処法は、「このメール内のリンクは押さず、そのまま削除してください」とのことです。 注意したいのは、ChatGPTを含む生成AIも間違うことがある点です。AIは、事実ではない内容をもっともらしく答えてしまう「ハルシネーション」を起こすことがあります。また、送信元やリンク先などの情報が足りなければ、本物のメールを「詐欺の可能性がある」と判定することもあります。逆に、詐欺メールを見逃す可能性もゼロではありません。ただし、筆者が今回試した範囲では、詐欺メールを正規のメールと判断した例はありませんでした。100%任せきりにはできませんが、最初に立ち止まって確認するための相談相手としては十分に役立ちます。 ぜひ、シニアの家族がいる場合は、この方法を共有してあげてください。その際、文章のコピーやスクリーンショットの撮り方も一緒に教えてあげるとよいでしょう。そうした操作が難しければ、届いた内容や置かれている状況を自分の言葉でChatGPTに説明するだけでもかまいません。OpenAIの分析では、詐欺についてChatGPTに確認している利用者の半数前後が、状況を自分の言葉で入力したり音声で説明したりしているとのことです。 ChatGPTの回答に関わらず、不審に感じたメールやSMSに書かれたリンクからログインや支払いをするのは避けましょう(確認するときは、公式アプリやあらかじめ登録しておいた公式サイトを自分で開いてください)。もし、カード番号などを入力してしまった場合はカード会社へ連絡し、お金を要求されている場合やすでに支払ってしまった場合は、警察相談専用電話「#9110」や消費者ホットライン「188」に相談してください。なお、今回は生成AIの例としてChatGPTを挙げましたが、もちろん、GeminiやClaudeなどでも同様に活用できます。 詐欺師にとって困るのは、相手が途中で手を止め、ほかの誰かに相談することです。「こんなことで家族に聞くのは恰好悪い」と遠慮してリンクを押してしまうくらいなら、その前にChatGPTへ聞いてみてください。「今すぐ」と急がせる詐欺師のペースから抜け出し、考える時間を取り戻すことができます。手間もかからないので、ぜひ皆で活用しましょう。NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「[email protected]」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

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