「デブすぎ臭すぎ」患者をSNSで侮辱し懲戒処分の看護師たち…再発防止策は病院の厳格な管理と徹底した教育のみ

「抵抗できない患者をターゲットにした、弱い者いじめの構図で悪質です。病院側も事態を重く受け止め、関係者を懲戒解雇するケースはありますが、それでも問題の根本的な解決には至っていません」そう指摘するのは、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士(68)だ。医療現場における一部の看護師による不適切行為が波紋を広げている。医療法人徳洲会が運営する千葉西総合病院(千葉県松戸市)では、女性看護師2人を今年10月10日付で懲戒処分とした。2人は夜勤中に自撮りした動画に《まじ暇》《つまんねえ》とテロップを入れたほか、入院患者が写り込んだ動画に《デブすぎ臭すぎ嗚咽祭りバカ楽しかった!!》(原文ママ)という言葉を添えてSNSに投稿していた。さらに、医療法人医誠会の医誠会国際総合病院(大阪府大阪市)でも、今年7月、ベッドに横たわる患者がうめき声をあげる様子や、職員が笑いながら患者の髪を切る様子を撮影した動画がSNSに投稿される事案が発生している。同病院は10月15日、当該職員に懲戒処分を実施し、すでに退職していると説明した。相次ぐ不適切動画の投稿によって病院を追われたとしても、制度上働く余地があるという。その背景には、看護師免許を取り消す際の法的なハードルが関係していると牧野氏は解説する。「看護師の免許が取り消されるのは、罰金以上の刑に処せられた場合です。法律上の欠格事由に該当する必要があります。さらに『保健師助産師看護師法第14条は、欠格事由に該当する場合に加え、看護師として品位を損する行為があった場合も、戒告・業務停止・免許取り消しの対象となり得る』とあります。しかし、密室である病室で行われた行為を立件するのは容易ではありません。刑事罰に問うためには警察に逮捕・起訴してもらう必要がありますが、証拠不十分で不起訴になる可能性が高いのが実情です」(牧野氏、以下同)患者本人が認知症であったり、周囲のスタッフも加担していたりする場合、被害の事実を正確に証言することは難しく、家族が不適切な動画を発見して警察に相談しても、捜査には高い壁が立ちはだかる。「たとえば患者の髪の毛を勝手に切る行為は傷害罪に当たる可能性がありますが、誰が撮影したのか、誰がアップロードしたのかといった証拠を揃えなければならないので捜査は難航します」また、SNSに動画をアップロードする行為自体についても、刑事事件として立件するには高い壁があるという。「動画をネットに上げれば、不特定多数の目に触れるため、名誉毀損罪(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の要件である『公然性』は満たします。しかし、名誉毀損罪で立件するには、患者の社会的地位を不当に貶めるような極めて悪質な言動が必要となってきます」「デブすぎ臭すぎ」というのは悪質な言動だが、侮辱罪はまだしも、名誉毀損罪で立件された過去の事例はほとんどないという。刑事事件としての立件が難しければ、免許の取り消しは困難を極める。民事訴訟による損害賠償請求という救済の選択肢もあるが、被害者側には「費用倒れ」のリスクが伴うと牧野氏は指摘する。「もし仮に名誉毀損で損害賠償請求の民事訴訟を起こすとなれば、裁判所に提出する動画や誰がSNSにアップしたのかといった発信者情報の証拠を自ら集めなければなりません。弁護士に依頼して発信者情報開示請求などを行えば、多額の費用と時間がかかります。名誉毀損や侮辱が認められたとしても、賠償額は数万円から数十万円程度にとどまるケースがほとんどです。高額な弁護士費用を支払えば、完全にマイナスになってしまいます」結果として、法的なペナルティを科されることなく、新たな職場で再び医療に従事するケースも想定される。実態が表面化しにくいことも課題のひとつだという。「看護師が起こした不適切行為は、裁判に至るケース自体が少なく、実態が見えにくいのです」では再発を防ぐためには、どのような対策が求められるか。最後に牧野氏はこう語る。「病院が厳格な管理を行い、そうした行為が起きないよう未然に防ぐ以外に、有効な手立てはありません」一部の心ない行動が医療現場全体の信頼を揺るがしかねない。患者の尊厳を守るため、各医療機関における教育や管理体制の強化だけでなく、再発防止が求められている。

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