日本の会社員は、給料から税金を1円単位で天引きされる。一方、外国人の場合は、国税が徴収しきれないケースがある。37年間にわたり税務行政に携わった元税務署長の横井克宏さんは「中国人留学生への税務調査では、納税漏れを疑って動いても、相手が帰国してしまうと徴収が極めて難しくなることがあった」と振り返る――。(構成=ライター・小林義崇)■「単なる親戚からの借入金です」 2026年9月、京都府警は、免許を受けずに日本円と中国人民元の為替取引をしたとして、中国籍の会社役員ら男女3人を銀行法違反(無免許営業)の疑いで逮捕しました。いわゆる「地下銀行」です。 産経新聞などの報道によれば、逮捕容疑は、2023年10月から2024年3月ごろにかけ、12回にわたって約1億5000万円の現金を受け取り、中国の指定口座に計737万7000元を振り込んだというものです。府警は、3人が少なくとも十数人から依頼を受け、約6億円相当の人民元を送金していた疑いがあるとみて調べています。 このニュースを見て思い出したのは、私が国税職員だった時代に何度か出会った中国人留学生の事案です。地下銀行を通じて中国から入ってきた多額のお金が、日本にいる留学生の口座に集まっていました。留学生はそのお金を投資に回し、大きな利益を得ていたのです。 留学生の立場に見合わない大金ですから、国税から見れば「なぜこんなにお金を持っているのか」という話になり、税務調査が入ります。すると彼らは、口をそろえて「単なる親戚からの借入金です」と言うのです。■帰国されたら、手に負えない 彼らは日本に居住している間に暗号資産投資などで利益を得ていたため、国税としては申告・納税漏れを疑って動きます。 しかし、相手が留学生だと、ここから先がとても厳しい戦いになります。帰国するなどして、日本国外に行方をくらますケースが多いからです。 日本の国税が差押えなどで強制的に税金を取り立てられるのは、基本的に日本国内にある財産に限られます。日本での手続きを代わりに担う「納税管理人」を立ててくれていればいいのですが、その手続きもせずに帰国します。納税管理人も選任せずに帰国されると、本人との連絡や税務上の手続きにも支障が生じ、さらに、国内に差し押さえられる財産がなければ、徴収は一段と難しくなります。