離婚したい場合は、配偶者の不倫の証拠を押さえることが常に最善の方法なのか。離婚や男女問題に詳しい弁護士の堀井亜生さんは「ほかに離婚できる事情があるのに、それを見過ごして不倫の証拠集めに固執する人は少なくない。仮に証拠をつかめても不倫の慰謝料は低いので得策ではない」という――。 ———- ※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。 ———- ■「夫が不倫、探偵に数百万円かけたが証拠が得られない」 主婦のA子さん(48歳)が離婚の相談にいらっしゃいました。 「夫が不倫をしているから離婚したいが、なかなか証拠が取れなくて困っている。どうしたら離婚できるか」というのです。 夫は7歳年上の会社員です。 帰りが遅い日があり、女性の影はあるものの、何度探偵を付けても空振りで、費用だけが数百万円もの高額になって困っているそうです。 また、夫はモラハラ気味なのでそれも不満ではあるものの、録音を警戒しているのか、怒鳴っている音声などもなかなか録れていないということでした。 相談を終えて、離婚の協議とともに証拠の取得方法などをアドバイスしてほしいということで依頼を受けました。 依頼を受けると、依頼者の方から離婚協議に必要な資料を送ってもらったりして、詳しい打ち合わせを行って方針を決めていったりする流れになります。 A子さんの場合、不倫の証拠を取得したいということなので、打ち合わせを行い、夫の行動パターンや交友関係などを詳しく聞くことにしました。 ■夫のスマホ「不倫の写真はなく盗撮の画像しか見つからない」 ———- 「飲みに行くといって帰りが遅くなる日はあるが、いつも急なので探偵を依頼するのが間に合わない。決め打ちで前もって依頼したことが数回あるが、その日はどこにも寄らずに帰宅した。唯一同僚たちと飲みに行っているところが撮れたのみで、女性と接触しているところはいまだに撮れていない。 でも、夫は交友関係が狭いので、飲みに行くというのは嘘できっと女性と会っているはず。 夫は家ではいつも不機嫌にしていて、『お前は女として魅力がない』などと言ってくるので他に女性がいるに違いない……」 ———- こういった話をしばらく続けた後、A子さんは、「スマホのロックが外れていたから不倫の写真がないかと見てみたんですが、盗撮の画像しかなくて……」とおっしゃいました。 盗撮という言葉に驚いて詳しく聞くと、夫は常習的に女性の盗撮をしているというのです。