家に居ることが多いので、テレビを見ている時間が長い。数年前にテレビを買い替え、一緒にタイムシフト機能があるレコーダーを購入した。「見たい番組を、見たい時に」というのは僕にとって革命的で、CMを早送りしたりすると、1時間番組が45分程度に短縮できて、時間を得した気分になる。 例外はスポーツ中継で、何が起きるかわからないから、リアルタイムで視聴しなければ意味がない。昨年は大谷翔平選手の活躍と、パリオリンピックにくぎ付けだった。 先月27日に行われたフジテレビの記者会見を最後まで見てしまった。質問なのか糾弾なのか、長々と自分の意見を開陳し、会見のマナーを逸脱した不規則発言や怒号も飛び交った。大学時代、全共闘学生が団交で学長や理事長をつるし上げた光景を思い出した。自分でまいたタネとはいえ、フジの経営陣が気の毒になったが、通常の番組を飛ばして10時間半も中継を続けたのは英断と評価する。世帯視聴率が13・1%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)と、普段より高かったのは皮肉である。 昭和47(1972)年2月、「連合赤軍」のメンバーが長野県軽井沢町の「あさま山荘」に立てこもり、機動隊と銃撃戦を繰り広げた。10日目にクレーンでつり上げた鉄球で建物を破壊して、人質を救出し、メンバー5人が逮捕された。10時間余りに及んだ救出作戦をNHK、民放そろってテレビ中継し、最高視聴率は89・7%に達した。報道特別番組ではいまだに破られない記録である。 テレビは「あるがまま」を映し出す時代の証言者だった。そして、独創的な企画で社会現象を巻き起こすヒット番組を生み出した。 NHK放送文化研究所の2020年国民生活時間調査によると、1日に15分以上テレビを見るのは、10~15歳で56%、16~19歳で47%、20代で51%だった。全体では79%だが、若い層は半分しかテレビを見ていない。5年ごとの調査だから、現在はさらにテレビ離れが進んでいるだろう。 テレビ局はアイドルやお笑い芸人らを出演させて、歓心を買おうとする。結果、似たり寄ったりのバラエティーやトーク番組ばかりになる。中居正広さんと女性のトラブルを巡るフジテレビの問題は、第三者委員会の調査結果を待つしかないが、人気タレント頼みの安直な番組づくりでは視聴者に見放される。