滋賀県東近江市の湖東記念病院の患者死亡を巡り、再審無罪が確定した元看護助手西山美香さん(45)=彦根市=が国と滋賀県に約5400万円の損害賠償を求めた訴訟の第14回口頭弁論が20日、大津地裁(池田聡介裁判長)であり、結審した。捜査段階の取り調べなどに違法性があったか否かが主な争点。判決は7月17日に言い渡される。 2020年3月の再審無罪判決は「自白供述以外の証拠では、事件性は認めるに足りない」と判断。捜査段階で取り調べにあたった警察官が、自身に対する西山さんの恋愛感情や迎合的な供述をする特性を利用し、うそを含む自白を誘導したとして、捜査手続きの不当性を認定した。 この日の最終弁論で、西山さんの代理人は「警察や検察に謙虚な姿勢は垣間見られず、裁判所が厳しく断罪する必要がある」と述べた。「供述弱者」とされる西山さんに対する県警の取り調べを改めて批判し、違法性を強調した。 また、検察は県警の違法行為を放置して証拠精査や追加の捜査をしないまま起訴したとし、長期にわたる身体拘束と精神的な苦痛を与えたとした。 西山さんは意見陳述で「なぜ私が自白してしまったか、裁判所には国や県の違法を認めてもらいたい。つらい気持ちを分かってほしい」と訴えた。 一方、被告の国は「(検察の)起訴の判断が合理性を欠くとはいえない」とし、県は「(県警の)捜査に違法はなかった」と主張した。ともに訴えの棄却を求めた。 また、この日の弁論で西山さん側は、将来得られたはずの「逸失利益」の算定額を見直し、請求額を提訴時の約4300万円から引き上げた。 西山さんは、殺人容疑で逮捕した県警や検察の違法捜査などにより、「誤った有罪判決で長期の身体拘束を受けた」とし、20年12月、大津地裁に提訴していた。