韓国では戒厳令騒ぎで逮捕されてしまった尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に対する糾弾派と支持派が集会・デモを競っているが、先週末、伝統的に野党・革新勢力の牙城である光州(クァンジュ)市で珍しい対決風景が見られた。大統領の弾劾・罷免を要求する知事や市長、市民団体はじめ野党勢力の集会より、弾劾反対を叫ぶ保守系の集会の方が盛況だったのだ。 光州は人口約140万で韓国南西部の大都市。1980年、戒厳令下で金大中(キム・デジュン)氏が逮捕されたことに市民ぐるみで反発し、民主化要求のデモと軍の衝突で多数の犠牲者が出た光州事件の歴史から〝民主化の聖地〟などと呼ばれてきた。しかし一方では光州事件に対する批判や異論をはじめ、保守派の主張は一切認められないなど〝野党独裁〟の雰囲気でも知られる。 今回も弾劾反対集会に対して市長や野党陣営は「光州市民への冒瀆(ぼうとく)」などといって堂々と禁止論を主張していた。弾劾反対集会には他地域からキリスト教系などがかなりはせ参じていたようだが、結果は地元警察発表では1万人と3万人で保守派が圧勝。光州では全く異例の出来事となった。 保守派は「光州も政治的に異論と多様性を認める本当の民主化が進むといいね」と皮肉っているが、これ一過性のエピソードに終わるのかどうか。(黒田勝弘)