新型コロナウイルスのようなパンデミック(世界的大流行)時に迅速なワクチン開発ができるよう、文部科学省は、遺伝子改変した生物が環境中に拡散するのを規制するカルタヘナ法に基づく確認取得について、手続きを簡略化する。省令改正などを経て、3月中に改善策を整える。 ワクチン開発では、ウイルスのゲノム情報を基に、人工的に遺伝子を合成したり、大腸菌に遺伝子を組み込んで増殖させたりすることがある。この際、病原性が高いケースなどで、遺伝子改変した生物の拡散防止措置について同法に基づき文科相の確認を取らなければならない。 新型コロナの流行初期には、この手続きを踏むのに時間がかかり、迅速なワクチン開発の妨げとなったとの指摘がある。 文科省は2024年、この手続きについて見直し作業を本格化させた。24年末には同法の施行規則を改正し、25年3月中には省令も改正する。 施行規則の見直しでは、パンデミック時などに新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく政府対策本部が設置された感染症については、大臣確認を不要とする。各大学や企業などが設けた委員会に審査を委ねる。ただし、本部が置かれている間の特例で、研究の内容も治療や予防、診断につながるものに限る。 省令改正の案では、ウイルスのゲノムを大腸菌に組み込んでも、病原性や感染性に関係しない研究については、同本部の設置にかかわらず大臣確認を不要とする。パンデミックが起きる前から、ゲノム情報を使った研究に着手できるメリットがあるとの声が上がっている。 主要7カ国(G7)は、パンデミックが発生してから、100日以内のワクチン承認などを達成する「100日ミッション」を掲げる。簡略化は、実現のための取り組みの一つと言えそうだ。 カルタヘナ法を巡っては、23年3月、赤く光る遺伝子を組み入れたメダカを国の承認なしに飼育・販売したとして、同法違反容疑で男性らが逮捕される事件が注目された。【渡辺諒、寺町六花】