◆「ホン・ジャンウォンのメモ」争点は裁判官が直接質問 防諜司令部が政治家や裁判官を逮捕しようとしたという、いわゆる「ホン・ジャンウォンのメモ」も主な質問の素材だった。これに先立ちホン・ジャンウォン前国家情報院第1次長が「尹大統領が『みんな捕まえろ』と指示し、呂寅兄(ヨ・インヒョン)前防諜司令官が逮捕リストを伝えた」と暴露して触発した争点だ。戒厳状況でも無制限の逮捕が許されるのではないため、この部分も違憲かどうかに関連している。 唯一2回出席(5次・10次弁論)したホン前次長の証言をめぐり国会側と尹大統領側が激しく争うと、裁判官が追加の質問で信憑性を問う場面が何度か出てきた。5次弁論で鄭裁判官が、呂前司令官が検挙支援を要請したとすれば「検挙要請」でなく「検挙支援」と書くべきではなかったのか指摘すると、ホン前次長は「やや合理的でない形で書いた部分」と認めた。 また金裁判官は10次弁論で「(戒厳当日の)国務会議で趙太庸(チョ・テヨン)国家情報院長が席にいたが、院長でなく1次長に電話をしたとのは理解できない」と指摘した。尹大統領が電話で直接指示したというホン前次長の証言が続くと、「証人と尹大統領はお互いよく知っていて認識する関係なのか」と話しながら、こうした疑問を表した。 ◆尹大統領の戒厳宣言の背景は関連証人3人にだけ質問 質問対象と役割分担も目を引く。最大の関心事である戒厳軍の活動に関してはチョ・ソンヒョン首都防衛司令部1警備団長(13日、8次弁論)を証人に職権採択しながらまで集中した半面、尹大統領側が戒厳宣言の背景の一つとして明らかにした不正選挙疑惑や野党の予算暴挙には関心を見せなかった。 裁判所側が質問をしなかった証人はわずか3人だが、不正選挙疑惑に関連した白鍾郁(ペク・ジョンウク)前国家情報院第3次長、金竜彬(キム・ヨンビン)中央選挙管理委員会事務総長、野党の予算暴挙を証言した朴春燮(パク・チュンソプ)大統領室経済首席秘書官だ。李美善(イ・ミソン)裁判官が金前長官を相手に「戒厳の目的が野党に警鐘を鳴らし、不正選挙の証拠を収集するためか」「国家非常立法機構が第5共和国の国家立法会議のようなものか」と尋ねたこと以外に、他の証人への関連質問は全くなかった。 質問自体は金炯枓裁判官が最も多くした。裁判官の誰も質問しなかった白前次長ら3人を除いた13人に質問をした。続いて鄭亨植裁判官が8人に、文炯培(ムン・ヒョンベ)憲法裁判所長権限代行が3人に質問をした。李美善裁判官は1回質問し、鄭貞美(チョン・ジョンミ)、金福馨(キム・ボクヒョン)、鄭桂先(チョン・ゲソン)、趙漢暢(チョ・ハンチャン)裁判官は一度も質問をしなかった。 憲法裁は25日の弁論で最後陳述を聞いた後、評議で証言と証拠を総合的に判断して罷免するかどうかを決める。裁判官の質問が国会活動妨害などに集中しただけに、国憲紊乱目的があったかどうかが核心基準になるとみられる。大統領弾劾審判は弁論終結から通常2週間内に宣告されるため、来月中旬ごろ大統領が罷免されるかどうかが決定する見通しだ。