「熊野寮の天才児」はもう世間に受け入れてもらえない…「京大恒例イベント」で7人が逮捕者された本当の理由

京都大学の学生寮「熊野寮」の祭りで同大学の本部棟に押し入り業務を妨害したとして、学生ら7人が逮捕された。『京大思考』(宝島社新書)を出した神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「この事件は、国立大学への『世間の視線』を象徴しているのではないか」という――。 ■かつては「恒例行事」だったが… 「ああ、またか」 京都大学の「熊野寮」への警察の家宅捜索のニュースを目にした多くの京大生や卒業生の感想だろう。 大学受験シーズン真っ盛りの2月8日および13日に、京都大学の現役学生ら男女7人が逮捕された。 容疑は、2022年12月2日に、同大学の総長室のある建物に押し入り、職員を威圧するなどした威力業務妨害の疑いだった。容疑を裏付けるため、京都府警は、2月9日、同大学の学生寮「熊野寮」を家宅捜索した。 定期的に行われる「ガサ入れ」(捜索)は、京大入学から10年間ほど、通りを隔てたところに住んでいた私にとって、恒例行事だった。 機動隊を導入した、ものものしい警察側と、それを阻止したり、おちょくったりする熊野寮側との攻防、さらには、結局、逮捕者が出ない、というところまでがセットで、「お決まりのイベント」だった。 しかし今年は違った。 「総長室突入」と称した企画で、約250人の学生らとともに、京都大学のトップ=総長のいる部屋のある建物(本部棟)に入り、拡声器を使って職員を怒鳴りつけるなどして、大学の業務を妨害した疑いで、京大生ら7人が逮捕されたからである。 ■月の家賃は700円、光熱費は1500円 毎日放送(MBS)によれば、逮捕された容疑者には、中核派の活動家が含まれており、2月12日には、東京都江戸川区にある「前進社」も、警察が家宅捜索している。 逮捕された7人は取り調べに対し黙秘していると報じられており、「総長室突入」なるものが、実際に何だったのかは、不明なところが多い。 それよりもまず、この事件で注目を集めた熊野寮をはじめとする、国立大学の学生寮について、確かめたい。そこに、いまの国立大学をめぐる社会の視線と、実態とのズレがあらわれているからである。 熊野寮は、「1965年4月13日に設立された京都大学の学生自治寮です」と、ウェブサイトに書かれている。 大学のウェブサイトには、寄宿料(家賃)は月額700円、光熱費は1500円から2500円と書かれており、熊野寮が作った動画では、「維持費月額4300円で住める」と紹介されている。 「アパマンショップ」のサイトによると、熊野寮のある京都市左京区のワンルーム家賃相場は4万6000円である。熊野寮には個室がなく、2人部屋か4人部屋であるとはいえ、それでも、相場の10分の1という破格の安さではないか。

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