【バンコク稲田二郎】ミャンマー東部の特殊詐欺拠点の摘発に関し、タイ当局がミャンマーの少数民族勢力「国境警備隊(BGF)」幹部ら数人の逮捕を検討している。ただ、幹部らは詐欺や人身売買を含む不正行為への関与を否定。証拠不足などを理由に逮捕状の請求は難航しており、捜査の長期化も指摘されている。 タイ当局がターゲットにしているのがBGFトップのソーチットトゥ大佐。中国系犯罪組織が拠点を置くミャンマー東部ミャワディを実効支配し、組織と協力関係にあると指摘されてきた。タイ法務省特別捜査局(DSI)はソーチットトゥ氏らが人身売買などに関与し、その経由地としてタイを利用した疑いがあるとして捜査。逮捕に向けた会議を複数回開催しているが、証拠不足を理由に逮捕状を請求できていない。既に捜査の長期化を視野に入れているとの情報もある。 ソーチットトゥ氏はこれまで「コールセンター詐欺に関与したことはなく、利益も得ていない」「土地の賃料として1エーカー(約4千平方メートル)当たり5万~10万バーツ(約23万~46万円)を受け取っていた」と主張。土地の賃貸事業は2018年に始まり、ビルの借主が勝手にオンライン詐欺に手を染めたと説明している。 BGFは犯罪拠点の掃討作戦で、これまでに約7千人を解放したとしている。詐欺拠点の摘発を巡っては、中国の圧力を受けたタイ政府が犯罪地区への送電を停止。これを受け、犯罪組織を容認してきたBGFが態度を一変させたのが実態とみられている。