相次ぐ告発、選挙違反の捜査に追われる検察 警察とのすみ分け曖昧、「不健全」指摘も

選挙違反に絡む告発が検察当局に寄せられ、検事が直接捜査に当たるケースが相次いでいる。選挙違反事件は本来、豊富な人員による「人海戦術」が得意な警察の領域。自白頼りの汚職捜査が難しくなったこと、司法に市民感覚を反映させるのが目的の強制起訴制度の存在が背景にあるとの見方もある一方、「無数にある選挙違反の捜査に「『少数精鋭』の検事が忙殺されている」と、従来のすみ分けが曖昧となっている現状の「不健全さ」を指摘する声も聞かれる。 ■最近話題の疑惑でも 神戸地検は今年2月、昨年11月の知事選で再選した兵庫県の斎藤元彦知事側が交流サイト(SNS)の運用をPR会社が有償で請け負ったとする疑惑に絡み、兵庫県警とともに、PR会社を公職選挙法違反容疑で家宅捜索した。 疑惑を巡っては、大学教授らが「公選法違反罪に当たる」などとする告発状を地検と兵庫県警に提出、受理されていた。 斎藤氏を告発した大学教授は、昨年7月の東京都知事選でSNSを駆使して支持を集め、得票数第2位となった前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏を巡っても、選挙期間中に行われた集会のライブ配信に関し違法な報酬支払いを制作会社側に約束したとして東京地検に告発。別の市民団体も石丸氏側を告発している。 ■「数は多くないが…」 「数自体は決して多くはないが、確実に目立ってきている。不起訴事案に至っては、明らかに増加傾向だ」。告発などを端緒とした検察による選挙違反事件の摘発について、ある検察OBはこう指摘する。 法務省発行の『検察統計年報』によると、平成26~令和5年の10年間で、国政選挙に絡み検察当局が公選法違反(選挙違反)容疑で逮捕したのは計9人。いずれも参院選を舞台にしたものだ。 平成26年には高松地検が、前年の参院選比例代表の開票作業で白票を水増ししたとして高松市選挙管理委員会事務局長(当時)らを逮捕。参院選で票のとりまとめを依頼し地方議員ら100人に現金を配ったとして令和2年、東京地検特捜部が元法相の河井克行氏と妻の案里氏を逮捕したのは記憶に新しい。 一方、地方選に絡む逮捕者数は計4人。有名なのは、東京都知事選後に運動員へ報酬を支払ったとして28年、東京地検特捜部が田母神俊雄元航空幕僚長らを逮捕した事件だろう。

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