「もう十分生きたから」三姉妹は走った…内乱を防いだ韓国市民らのあの夜(3)

(2から続く) 12日、財団「真実の力」が公示を上げた後、100人以上の人たちがインタビューに応じる意思を明らかにしてきた。「まだ作業の初期段階だが、これまで記録した言葉にはいずれも自分の安危を顧みず、『せめて助けになれば』という思いで飛び出した市民の決然とした気持ちと感動があった」(ソン・ソヨン常任理事長)。 内乱を起こした尹大統領は「その日は何も起こらなかった」と主張しているが、命がけで何も起きないように戒厳軍を阻止した市民の前で、彼の嘘は暴かれた。 「私は運が良かったんです」 キム・ドホンさん(34、2月14日インタビュー)は与党「国民の力」の党本部前のオフィステルに住んでいる。鐘路(チョンノ)で夕食を共にする約束があったキムさんは、戒厳速報を見て急いで帰宅した。「タクシーから降りたとたん、国会に向かって飛んでいくヘリコプターを見て、戒厳を実感」した。家にかばんだけおいて、午前12時頃に国会正門に向けて走った。「インスタグラムの生配信で国会前の状況を伝えた」。国会周辺を回りながら浸透する兵士たちがいないかも確認した。何が起きているのか分からず、戸惑っている外国人に会うと、できる限りの言葉を使って事態を説明した。 戒厳令は自己検閲をもたらした。大衆音楽評論家であるキムさんは、布告令第1号(午後11時発表)を見てから、「人生の危機」を直感した。「過去に書いた文章の中で、政治的と思われるようなものがあっただろうか」頭の中を点検した。「報道機関が統制されれば私の連載はどうなるのか」を心配し、「報道指針が下されたら、運営中のユーチューブチャンネルを閉鎖しなければならないのか」と悩んだ。キムさんは身を縮めて隠れるよりは「多くの人と声を合わせる方が安全のためにも良い」と判断した。自宅が国会のすぐ前なので「根本的な不安」があったが「国会前に住んでいて運が良かった」とも思えた。「最悪の場合が発生したら」自分にもできることがあるかもしれないと思った。 「戒厳軍が発砲するかもしれないと思いました。本当に大変なことが起こるかもしれない、本当に人が死ぬかもしれないと。銃に撃たれたり暴力で怪我をする人がいたら、自分の家に連れてこようと思いました。けが人や具合が悪くなった人が見えたら連れてこよう、逮捕作戦が始まったら隠してあげよう、その過程で私が怪我をするかもしれないとは考えませんでした」 4日後、国会の表決で弾劾案が否決された時は、ソーシャルメディアに自宅を公開した。「汝矣島(ヨイド)の集会に来られたら、私の家で休んでください」という内容の投稿をし、「バッテリーでも何でも貸します」と約束した。スペースを確保するために「家の構造も変えた」という。「家の前の道路にキャンピングチェアを出して、毛布とカーペットを敷き」集会参加者が座れるようにした。キムさんは「自宅の地理的利点を活用」することにした。 「駐屯地となろう」 真実の力は、少なくとも300人のインタビューを目標にしている。国会前に駆けつけた市民たちを探すのとは別に、全国で同時多発的に行われる弾劾集会の発言も収集している。記録が集まったら本にまとめ、「変化した民主主義の発話方式」に対する言語分析を行う計画もしている。「あの日の一人ひとりの足跡」を辿って記録するインタビューが、韓国社会で「市民」が単なる集合名詞で呼ばれないよう「彼ら一人ひとりの顔を取り戻す」作業になることを財団は期待している。 武装した軍人たちの前で恐れ、怖がっていた市民たちは、互いの存在を確認してから落ち着きを取り戻した。「赤ちゃんを抱えている若い母親、塾の帰り道に駆けつけた10代たち、小学生からおばあさんまで3代が一緒にきた家族など、『仲間たち』と一緒にいるということを確認し、気持ちが落ち着いた」(ユ・ヒョンジュさん)。戒厳解除後、ユ・ヒョンミさんは「2、3時間寝てから、一番上の姉と一緒に再び汝矣島に向かった」という。「完全に閉ざされていた国会の門が大きく開かれていた。強い冬の日差しを浴びながら、国会の中庭を歩いた」。わずか数時間前の内乱の現場だったという事実が「信じられず、現実とは思えなかった」という。共に守り抜いた日常が「光り輝いており、暖かくて、胸がいっぱいになった」 「歴史的な瞬間に生きている。私たちが共にその瞬間を作り出したんだ」 イ・ジュンヒョンさんは「あの瞬間」の証言者になった。大統領弾劾訴追案が国会で可決されたのを見て、「あの日に撮った写真と映像を載せても危なくない」と判断した。「目撃したもの」を自身のブログで公開した。記録が積もれば積むほど、民主主義にも厚みが増した。不幸な歴史を繰り返さないためにも「記録を残して保存しなければならない」と、彼は考えた。真実の力の信念でもあった。 イ・ムニョン記者 (お問い合わせ [email protected] )

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