窃盗相次ぐ貸金庫、ハナ信組でも 鍵不正使用に共通点 「性善説」限界で管理強化が課題に

ハナ信用組合横浜支店の貸金庫から多額の現金を盗んだとして4日、神奈川県警に逮捕された李勝炫容疑者は、鍵を複製して犯行に及んだとみられている。金融機関では近年、内部による貸金庫窃盗が相次いでいるが、いずれも鍵を不正に使用していた点が共通する。職員、行員への「性善説」に依拠してきたシステムの脆弱(ぜいじゃく)さが指摘されており、管理強化が課題となっている。 県警によると、ハナ信組の貸金庫は、職員が信組の管理する複数の鍵で貸金庫室に入った上で棚からボックスを取り出す。その後職員は退室し、顧客が自身の持つ別の鍵を使ってボックスを開ける仕組み。李容疑者は平成29年に支店の貸金庫を新しくした後、信組管理の複数の鍵とボックスの鍵などを複製したとみられている。 ■金融庁に被害相談28件 貸金庫からの窃盗を巡っては今年1月、三菱UFJ銀行の支店で貸金庫業務を統括していた女が逮捕された。みずほ銀行も今年2月、支店の元女性行員が顧客の現金を盗んだと発表。いずれも、スペアキーを不正に持ち出すなどして貸金庫内の金塊や現金を盗んでいた事が判明している。 金融庁には令和2年7月~6年12月、被害などを訴える顧客からの相談が20金融機関で28件寄せられており、明らかになっていない被害はほかにもあるとみられる。 「内部の人間が悪意を持って盗もうとしたら、防ぎようがない状態だった」。あるメガバンクの関係者は、実態をこう打ち明ける。 貸金庫はプライバシーの確保を「売り」にしており、顧客が何を預けているか、金融機関が確認することはない。問題となった行員、職員はこうした特性を利用し、周囲の目を盗んで不正に手を染めていた。 ■入室記録一部閲覧できず 三菱UFJでは、スペアキーを封筒に入れ、割り印をして保管していたほか、貸金庫室への入室記録が残るようにしていたが、元行員の女は事前に電源を落とすなどしてチェックの「網」をすり抜けた。ハナ信組でも貸金庫室への入室記録が一部閲覧できなくなっていたという。 三菱UFJやみずほはスペアキーの本店での一括管理や、複数人による管理への切り替えなど対策を進めている。ある行員は「行員への『信頼』を前提とした、現行の仕組みそのものからの脱却が求められている」と話した。(橋本謙太郎、外崎晃彦、梶原龍)

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