シンガポール政府は、マレーシアに輸出されたデル・テクノロジーズとスーパーマイクロ・コンピューターのサーバーに、アメリカが中国への輸出を禁止している米エヌビディア(NVIDIA)製の先端半導体が搭載されていた可能性が浮上したため、調査を始めたことが分かった。これは先月、人工知能(AI)分野の最先端企業であるエヌビディアのチップを中国に密輸した疑いで仲介者らがシンガポールで摘発されたためだ。 シンガポール警察は2月下旬、アメリカによる対中規制に違反してエヌビディアの先端半導体を調達し、密輸した疑いでシンガポール人2人と中国人1人を逮捕・起訴したと地元メディアが伝えた。シンガポールのチャンネル・ニュース・アジア(CNA)によると、3人は2024年、シンガポールからマレーシアに出荷された製品の実際のエンドユーザー情報を偽り、アメリカの輸出規制を回避して中国にエヌビディア製チップを持ち込む目的で密輸したとされる。 この報道を受け、同国のK・シャンムガム内相兼法務相は3日、記者会見を開き、今回の調査について詳細を明らかにし、輸出された問題のサーバーが第三国に流れたかどうかについては現在調査中だと述べた。 同氏はシンガポールがサーバーの最終目的地を特定するため、マレーシアとアメリカにさらなる情報を求めたことに言及。「問題は、マレーシアが最終目的地だったのか、それともマレーシアから、さらにどこか別の場所へ出荷されたのかということだが、現時点ではまだはっきりしていない」と述べた。 米ブルームバーグは、「この事件によって、エヌビディアの半導体を中国や、米国が輸出を規制しているその他の国々に流しているシンガポールを拠点とする企業の存在が明らかになっている」と報道。同メディアは1月、米ホワイトハウスと連邦捜査局(FBI)が、中国の新興企業DeepSeek(ディープシーク)がシンガポール経由でエヌビディアの先端半導体を不正入手した疑惑について捜査していると報じていた。 一方、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは2日、匿名の業者からの情報として、中国のバイヤーがアメリカの輸出規制を回避し、第三国経由でエヌビディアの最新AIプロセッサー「Blackwell」(ブラックウェル)を入手していると報道。 エヌビディアはこの問題を調査中だとした上で、そのような経路で入手しても完全に機能するシステムは提供されないとし、「許可されていない国で入手、配送、インストール、使用、保守することはできない」との声明を出した。 さらに、「AIデータセンターは世界で最も複雑なシステムの一つ」と前置きし、「顧客はソフトウェア、サービス、サポート、アップグレードを備えたシステムを求めているが、ブラックウェルを所有していると主張する匿名の業者は、そのいずれも提供できない。当社は、転用の可能性に関するすべての情報を精査し、適切な措置を講じる」と続けた。